あれから彩は、エプロンを外し、水着の上から普段着を着込んだ。
「正輝の家、知らんのが裏目に出たな。」
チョコレートを再加熱し、液状にしなおし、具材に塗りこみ、冷蔵庫に寝かした。
彩は、正輝が置いていったチョコレートを開け、口に放り込んだ。
「苦っ。正輝。」
正輝のチョコレートはビターチョコレートだった。
◎
2月15日。この日は劇場公演。つまり、正輝と彩は必然的に会う日だ。
(いつもありがとうな。ほい。チョコやるわ。)
今日の彩はメンバーとして、渡すだけである。
彩の目に飛び込んできたのは、メンバーに囲まれている正輝だった。
その表情は思い切り笑っていた。
(正輝なんて知らん。)
控え室とは別の場所に移動し、彩はマネージャー正輝用に作ったチョコレート菓子をやけ食いしだした。
後、一つというところで彩の視界に正輝が飛び込んできた。
「山本さん。探したよ。」
正輝の表情は困惑の表情と安堵の表情が入り混じっていた。
「何しに来たん?」
「山本さんを探しに来たんや。キャプテンがいーひんと・・ん。急に何を?」
正輝の言葉の途中で最後の一個を彩が正輝の口に放り込んだのだ。
「加藤さん。一個だけ聞いてえぇ?・・私のこと、好きか嫌いか選択するなら、どっちや?」
「僕は、嫌いやない。・・早く戻りますよ。」
言葉を発した正輝の耳が赤くなっているのが答えと思い、彩は腰を上げた。
◎
劇場公演が終わり、彩を正輝が送迎する。
「加藤さん。ここまでな。」
「あ、はい。・・彩。チョコ、ありがとう。」
「いつも世話になっているから、当然や。」
そこに場違いな着信音が鳴り響く。
正輝は、マネージャーモードに戻り、口を開く。
「山本さん。気をつけて、帰ってな。」
「あ、はい。」
正輝の姿が見えなくなると、彩はスマホを確認した。
そこにはメンバーからのラインがあった。
『彩(さや姉)へ。加藤(正輝)さんにチョコレート持っていったら、義理か?って聞かれた。後、本命やったら受け取らんとも言われた。加藤さんの意中の人って誰やろうな?〇』
皆、ほとんど同じ文面で最後はにやけ顔の絵文字をつけてきていた。















