家族の章A
心配
光圀が家で料理を作っていると、何やら外から物音がした。

(泥棒?それか奴のクライアントが直接?)

『ガチャッ』

音の主は鍵を持っているらしく、玄関の施錠を解いた。

「只今。光圀、大丈夫?」

「あぁ。莉乃か。」

光圀は呑気に料理をお皿に盛ったところだった。

「老婆に襲撃されたって聞いてきたのに、何してるの?」

「どいつもこいつも俺のこと、そんなに信用出来ないのか?」

「心配してきたのに何よ!」

「余計なお世話だ。」

「ふん。千尋ともう一度実家に帰らせて頂きます。」

「おい。莉乃。」

光圀襲撃事件の担当は敬司で、莉乃に連絡を入れた為、現在に至るが、莉乃が忘れ物をしていることに光圀は気が付いたのだ。

「肝心な千尋は?」

「良かった。」

「もしかして?」

「記憶を吸収されたって聞いていたし、万が一のことを考えて、実家に置いてきたの。」

「俺は絶対にお前達、家族を忘れないから。」

「千尋を置いてきた理由、もう一つあるの。今日、そういう日。」

光圀が莉乃に釣り上げられたようだ。

■筆者メッセージ
祖父が眠る孫(千尋)を抱いた瞬間に泣かれる為に、泣かない子供が欲しいって思ったんだろうね。
光圀 ( 2018/05/04(金) 06:57 )