帰国モン
年が明けて数日が経った福岡空港に帰国した人物が二人いた。
正確には片方は留学先から一時帰国した女性、もう片方は福岡が地元で福岡県警に配属された男性刑事である。
しかも、二人共大塚光圀の知り合いである。
女性の方は勿論、穴井千尋である。
男性の方は、光圀の子分同然な人物、宮田敬司−−隣人の下の子である。
穴井は二ヶ所に連絡を入れた。
「お母さん。日本に帰ってきたけん。空港まで迎えに来て。・・待ってるっちゃん。」
一つは本物の家族、もう片方は同じ釜の飯を食った自身を長女とする憎めない家族の親父さんに電話をかけた。
「もしもし。パーパ?・・お正月の予定は?・・あの子の名付け親として、抱っこするって約束でしょ?・・近々お邪魔しますね。ヒューヒュー。」
迎えがくるまで、穴井はメンバーに帰国の旨を一斉送信し、読書をしだした。
「母さん。敬司だけど。・・空港に着いた。・・否。パトロール兼ねて、電車で帰る。・・大丈夫。じゃあね。」
敬司は地下鉄に乗るべく、歩きだした。
〇
敬司が宮田家の前にきたとき、ロードワーク帰りの光圀が大塚家の前にきていた。
「アニキ!」
「もしかして、敬司君か!?」
「久しぶりね。何しとると?」
「ロードワークの帰りやなか。」
「仕事は何しとると?さすがにどっかに就職したっちゃろ?」
「知らんと?」
「うん。知らん。」
「HKTの指原莉乃と俺が結婚したって大ニュースを知らんと?」
「えー!?」
「しぇからしか。近所迷惑やろ。」
「本当?」
「うぅん。こちらにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも天神城副将軍。大塚光圀公に在らせられるぞ。」
ポーズを決めた光圀は完全に歌舞伎役者そのものだ。
「解った。解りました。」
「敬司は、帰省したと?」
「刑事になって福岡県警に配属されたと。母さんには悪いけど、同居すると。」
「まぁ、ご近所さんとしてよろしくな。敬司」
「はーい。大塚のお兄さん。」
二人は握手をしてそれぞれの家に入っていった。