家族
第十回総選挙、彩からの公開告白から一年が経った。
当然、正輝と彩は結婚をした。
彩はママタレント兼ソロシンガーとして再スタートをした。
彩のマネージャーとして、正輝は隣にいる。
彩の現在地は東京都某所。
「なんですかね。家の旦那達といい、子供といい。」
「まるで誰かが仕組んでいるみたいね。」
彩が面会をしているのは莉乃だ。
「ほんま標準語にときどきお国の訛りで。」
「ジンベエザメと家族が好きで。」
「けど、隣にいるとホッとする。」
「珠理奈とか後輩にも私達みたいなのが出てくるかしらね。」
「そんときは止めます?」
「否。言ってもたぶん止まんないよ。」
「早く仁に会いたいわ。」
そう言って、彩は自身の大きくなったお腹を愛しそうにさすった。
「やっぱり、さや姉のところも男なんだ。」
「さ、大塚さんのところの下の子も男の子ですか。」
「うん。美晴って名前よ。」
「先輩。これからもよろしくお願いします。」
「あんまり家に頼られてもね。」
二人のガールズトークは旦那への愚痴や近況報告、ネタが尽きるまで続いた。
○
加藤家は海遊館へとやってきた。
「ほら、仁。ジンベエザメやで。大きいな。」
「仁までジンベエザメ馬鹿にすな。」
「否。仁はジンベエザメ博士にするんや。」
「今日が何の日か忘れてへんよな?」
「結婚記念日なのは忘れてへん。彩。ほんまにありがとうな。」
「急になんやねん。」
笑顔で息子仁を抱いて、お礼を言う正輝に対し、彩は耳を赤くして、文句を言った。