終幕
遂に迎えた第十回選抜総選挙、今年は世界中のAKBグループが対象で会場はSKEの地元、名古屋ドームである。
彩は色々な意味で緊張していた。
「だーれだ?さや姉、当ててみて?」
思い当たる人物はいるが、何故この人がここに居るのかが謎だった。
「え?指原さん?」
「正解。」
振り返るとそこには赤ン坊(千尋)をおんぶした莉乃が立っていた。
「なんでここに指原さんが?」
「家の旦那さんの付き添いで、彩ちゃんの相談に乗れるのは世界中探しても、私だけだと思うって、光圀、旦那さんが。」
「指原さんはどうして、今の旦那さんと結婚したんですか?」
彩は率直な疑問を莉乃にぶつけた。
「光圀は頭は良いんだけど、博多なまりでいうのぼせもんで、暴走傾向にあったの。一度あいつ倒れたでしょ。私がブレーキになってやろうって思ったのよ。」
自分と正輝の関係に似ている部分を彩は感じた。
「あいつがまっすぐな思いをぶつけてくる。靴のヒールが折れて、目を瞑ったとき、心の中であいつのことを呼んでた。目を開けたら、あいつの腕の中。認めたわ。あいつが好きだって。彩ちゃんも加藤さんに似たような思い感じているんじゃない?」
「だからこそ、一位になりたいんです。」
「もしかして、私達にゲンを担いでいない?」
「アホな後輩みたいな真似するつもりになれなくて。」
「私達のときも背中を押してくれる子はいたから、私も背中を押してあげる。・・頑張れ。」
莉乃は文字通り、彩の背中を押した。
○
「さや姉。行ってこい。僕は信じているよ。ここで待っているから。」
「ほな。絶対に逃げるんやないで。」
「ちょっと怖い言い方だな。」
総選挙本番、結果はもちろん。
「第一位、NMB48山本彩。」
「皆さんありがとうございます。私の中で憧れがありました。指原莉乃さんのようにこの選抜総選挙で連覇をすることです。その夢が今日、今叶いました。そして、このタイミングで私は言います。私、山本彩はNMB、AKBグループから卒業します。一人の男に恋をしました。馬鹿でどうしようもなくて、私がいないとどうにもならん男に。でも、私はそいつのことが世界中の誰よりも好きなんです。私の相棒である、加藤正輝のことが。」
「あいつ、ほんまに言うとは・・・。」
スピーチを聞きながら、正輝は驚き半分で涙を流していた。
こうして、彩の48グループとしてのアイドル生活は終幕を迎えた。