別れ
加藤正輝と山本彩は同居人である。
今日は正輝の給料日で、二人は焼肉屋へとやってきた。
ここは以前、山田菜々から卒業と家を出る旨を言われた店舗で彩としてはデジャ・ビュ感しかなかった。
「ほい。乾杯。」
「彩。話を聞いて欲しい。」
(ほんまにデジャ・ビュか?それとも真逆か?それなら保留や。)
「好きです。だから、別れて欲しい。」
「どうゆうことやねん?」
「今のままじゃ、僕も彩も駄目になると思うんだ。良い機会だから、一人暮らしを始めようと思って。」
「そうか。・・!?」
「僕、ずっと待っているから。」
「アホ。死ぬまで待っとけ。」
正輝が彩を抱き締めたが、彩は正輝の身体に腕を回せなかった。
〇
正輝と彩は家に帰ってきた。
焼肉を食べたこともあって二人は歯を磨いている。
その手は二人の本心を示しているのか、繋がれている。
そして、二人はベッドへと移動した。
二人は最後の夜として、生まれたままの姿になる。
「彩。」
「正輝。」
唇を合わせる、舌を口の中にすべりこませる。
正輝に前戯は必要ない。
彩の裸体を見ただけで興奮するからだ。
しかし、彩はそういうわけにはいかない。
正輝の唇が彩の乳首を含み、吸い上げる。
右を三秒吸い上げ、左に移る。
犬も哺乳類だが、今の正輝は赤ん坊のようだった。
(母乳は出ぇへんけど、正輝に胸吸われて、変な気分や。)
正輝の顔はベッドの下に向かう。
「彩。すごい。」
彩のそこは湿り気を帯び、脈を打っていた。
「見るな。」
彩は顔を手で隠しながら、弱々しい声をあげた。
正輝はコンドームを自身のぺニスに装着し、彩と一つに重なった。
「彩。好き。大きな胸も、心配になる腰回りも、弄られる顎も、全部が好き。」
真っ直ぐすぎる言葉に彩は苛立ちも感じながら、嬉しさを感じていた。
「わ、た、し、も」
彩がそれ以上の言葉を紡ぐことはなかった。
正しくは紡ごうとすれば、正輝が止めた。
「彩は返事をしちゃ駄目だよ。したら、ルール違反だから。」
「正輝。いきそうや。」
「僕ももうすぐ」
「一緒に。」
「あぁ。」
二人はお互いの体温を感じながら、絶頂を迎えた。
「彩。好き」
後片付けを終えると正輝はそう呟いて、眠った。
「・・私も好きや。」
彩は正輝が眠ったのを確認するとそう呟いた。