汚点
正輝と彩は今日、休暇で買い物に来ていた。
アイドルとはいえ、生理現象は発生する為、彩はトイレに入っている。
正輝は元犬故に知っている匂いをキャッチした。
その人物はトイレに行った彩のものではない。
ドラフト生の須藤凜々花が正輝の視界に入ったのと同時に男も視界に入った。
彩以外は空気のように感じている正輝だが、視界に入っている二人は肉親とは呼び難い雰囲気だった。
ストレートな部分から二人は曲がり、正輝の視界から消えた。
普段は考えるより行動という正輝もその場で考えこみはじめてしまった。
(あの男。須藤の兄?弟?お父さんではないなら、親戚?それ以外だと・・・?)
「おい。」
正輝の目の前に彩のドアップが現れたのである。
「うぉ!?何?アヤ」
「どうしたん?考え事なんて珍しいな。正輝。」
この二人はメンバーの前で名字呼び、家ではファーストネームで呼ぶが、こういう場では彩(さやか)はアヤという偽名、二人は兄妹という体でいる。
「さっき、メンバーを見たんだけど、男の人も一緒にいたんだ。それでその事を考えていたんだ。」
「気にするなや。今日は非番やねんから仕事は忘れろ。買い物の続きや。」
「あぁ。」
(私に責める権利ないのをコイツ解っているんやろな。)
二人の心中は複雑だった。
〇
彩と須藤が同じ現場の仕事(劇場公演)だった為に、正輝は動いた。
「須藤。ちょっと良いか?」
「はい。」
二人は控え室から抜け出て、人のいない場所にきた。
「須藤。昨日、どこで何をしてた?実は、街中でお前と男性が歩いているのを見てしもうてな。あれが誰か気になって、な。」
「見られたなら仕方ないです。私が交際している彼氏です。・・私は先輩達のようになるつもりはありません。それに加藤さんに言われるつもりもありません。失礼します。」
恋愛禁止のアイドルの熱愛の現場を見た正輝だったが、注意する資格はとうにない為に去り行く須藤にかける言葉がなく、その場に立ち尽くすしかなかった。