バレンタインデー
二月十四日、この日はバレンタインデーである。
大塚光圀がどのようなバレンタインデーを過ごしてきたのか見てみよう。
〇一年目(共同生活時代)
「お帰り。」
「すごく甘い匂いがする。」
「時間あったから、チョコレートケーキ作ったんだ。晩御飯はそれに合わせて、お寿司な。遥、芽瑠。冷蔵庫の中身はママの分な。まぁ、お前達にはでかける前にチョコレート貰ったからな。」
大食い二人をわざわざ指名して、注意した。
光圀の手には未開封のチロルチョコレートセットがあった。
光圀の芝居にメンバーは心が痛んだ。
「ほんじゃ、俺は出かけてくる。」
「行ってらっしゃい。」
光圀はスーツ姿、顔が緩んでいれば行き先を言う必要はないだろう。
「た、只今。」
「さ、行くぞ。」
光圀が向かった先は勿論、莉乃の元(空港)である。
「只今。」
二人は無言のまま、家に帰ってきた。
「パパ。お寿司食べる?」
「あぁ。」
「はい。パパ、あーん。」
その日は冷え込んでいる筈なのに、この偽りの夫婦の熱は温かだった。
〇二年目
二月十四日の出勤前に光圀は、冷蔵庫の中から昨日作ったチョコレートを出し、嬉しそうに包装した。
出勤後はそのチョコレートを冷蔵庫にしまった。
一番上には宛名と注意書きが書かれていた。
(指原莉乃様。※お酒が入っています。大塚光圀より)
実際に光圀がお酒を入れたのは事実だ。
この当時は二十歳のメンバーが少なかった為、この表記で問題ない。
なんだかんだで莉乃がやってきた。
「指原さん。冷蔵庫にチョコレートを入れておきました。ただ、お酒が入っていますので、仕事終わりに持ち帰って食べてください。」
「ありがとう。はい。私からチロルチョコレート。」
「ありがとうございます。早速、いただきます。・・・ごちそうさまでした。」
数分後、莉乃のスマートフォンに光圀からラインが来た。
「指原さんへ。チョコレートに入れたお酒はスクリュードライバーです。お酒言葉は・・・。それが僕の気持ちです。」
「おーい。メンバーに差し入れのココアだ。」
光圀の元気な声が響き渡った。
〇
三年目、四年目は光圀と莉乃が夫婦になった為、語る必要もないだろう。