新成人との話
新年も明けて次の週には成人式、今年組には碧唯、咲良もいる。
「大塚さん。お祝いしてくれませんか?」
「例のごとく、妻子持ちだからって言うと思って、さっしーの許可はもらっています。」
咲良が見せたスマートフォンの画面には莉乃とのラインのやり取りが表示されていた。
光圀の自家用車は四人乗り仕様の為、光圀は五人乗りのレンタカーをわざわざ借りて、莉乃、千尋、碧唯、咲良と共に回転寿司に行った。
〇
成人の日から数日後、光圀のもとに尾崎支配人から電話がかかってきた。
「大塚君。今、電話して大丈夫だったか?」
「はい。どうしました?」
「実は、冨吉、冨吉明日香のお父さんが亡くなったんだ。」
冨吉明日香のお父さんは危篤だった為に、冨吉は成人式に参加していなかった。
「香典をという話ですか?」
「あぁ、そうだ。」
「尾崎さん。俺が冨吉のところに行っても良いですか?俺は両親を亡くしています。俺も色んな人に助けてもらいました。恩返し、恩送りがしたいんです。」
「良いだろう。君に任せる。」
〇
光圀は葬儀の二時間前に会場に到着した。
「冨吉。」
「大塚さん!?なんで?」
「運営代表で来た。ちょっと抜けれるか?」
「あ、はい。〇〇ちゃん。ちょっと抜けるね。」
光圀は冨吉母にも挨拶を終え、ホールの外にいた。
「冨吉。これを渡しておく。」
光圀が手にしていたのは二枚のハンカチだった。
「冨吉。俺の両親も既に死んでいるから、お前の気持ちは少しだけ解る。寂しかったり、悲しいだろうけど、もっとその感情にのまれかけている人がいる。その人をしっかり支えてあげろ。劇場に来たら俺や尾崎さん達、スタッフ、メンバーが、ファンがお前を支えてくれる。だから、前を見て進め!明日香!」
光圀は涙ながらに冨吉へエールを贈った。
〇
数日後、冨吉が劇場にやって来て、光圀を見て、彼女は口を開いた。
「お早うございます。親父さん。」
「えー!?冨吉、歳の差七つなのに親父さんはないだろう?」
「じゃあ、・・・アニキ!」
光圀に新しい変な繋がりが出来たようだ。