育児休暇
産休、育休の為に莉乃は暇を持て余していた。
千尋が大人し過ぎるのもあるが暇でしょうがなかった。
芸能人であるが故に移動手段は昔から飛行機、新幹線、タクシーだった。
路線バスに乗るのは芸能人になる前の一般人時代以来だ。
しかも、あのときと違い、子供までいる。
こういうシチュエーションになるなんて想像もしていなかった。
今日はショッピングモール(イオン)にやってきた。
正確には暇すぎて毎日来ていた。
三階まで産後の運動不足解消の為にわざわざ階段で移動し、ラーメン屋さんでランチを食べる。
このラーメン屋さんのメリットは、一名様でお召し上がりの場合、替え玉が無料になるのだ。
光圀の倹約姿勢がこの三年間の長いような短いような期間に莉乃にも移ってしまったようだ。
適当に時間をつぶして家に帰る。
○
ソファーで千尋と腰を下ろすと、千尋の目が開いた。
「やぁ、ふなっしーなしよ。千尋ちゃん。一緒に寝てくれるなしか?」
ふなっしーと共演したことが何度もあるので、似てなくてもふなっしー風にふなっしーのぬいぐるみを持ちながら千尋に話しかける莉乃だったが、肝心の千尋はしばらく首を左右に動かして、じっと一点を見つめていた。
その方向には光圀がかつて購入したジンベエザメのぬいぐるみがあった。
ジンベエザメのぬいぐるみを視界に捉えたのか千尋は再びその瞼を閉じた。
(まだ光圀は帰ってこないよね?)
時計を確認し、軽い昼寝と思い、莉乃も瞼を閉じた。
しかし、莉乃は目覚ましをかけるのを忘れていた。