出勤の日
六月十九日。千尋の人生三日目のこの日、光圀は男である為、出勤しないといけないのだ。
光圀はスーツに身を包み、車に乗り込む。
鼻歌まじりに病室に行く。
「おはよう。莉乃、千尋。」
だらしない顔になっている旦那に呆れつつ、莉乃は口を開いた。
「おはよう。光圀。千尋、パパが来たよ。」
静かな理由は、病院であることと千尋が眠っているからである。
「それじゃ行ってくるな。」
「あれ?もう行くの?」
「一分でも長くいたいけど、腰を下ろしたら、立ちたくなくなる。行ってきます。」
莉乃はなんとなく今日早く行きたい理由がわかったが、留める理由はない為、見送ることにした。
「行ってらっしゃい。」
「あぁ。」
○
光圀は、控え室のドアを開いた。
「おはようございます!」
『パン、パーン。』
光圀の入室と同時に、クラッカーの音が盛大に響いた。
「大塚さん(先生)!おめでとうございます。」
「あぁ、ありがとう。」
「大塚さん。メンバーから出産祝いを兼ねたお土産です。」
「ありがとう!」
本村キャプテンから沖縄土産を貰った光圀は心からお礼を言った。
光圀はメンバーと会う前に沖縄を何度も訪れていた。
ジンベエザメ観賞が主な目的だが、総選挙の開催場所が沖縄と聞いて、光圀が喜んでいたのは周知の事実だった。
しかし、光圀サイドでは千尋誕生、メンバーサイドでは台風襲来の影響で散々だった。
それでも、元気なメンバーと無事に再会できたことの方が光圀には嬉しかった。
「みんな、写真見るか?家の娘の写真。」
「見る!」
光圀は現在の幸せをかみ締めながら、笑っていた。