出産へのカウントダウン
光圀は、尾崎支配人に頭を下げていた。
「仕方ないな。その分頑張ってくれ。」
「はい。」
理由は一つ。妻、莉乃の臨月、千尋が生まれる予定日と選抜総選挙の日付がほぼ重なっていて、会場が沖縄の為に有給休暇を取ったのだ。
○
光圀の休みの日、大塚家には二冊の本があった。
それは世間一般でいうところのアルバムである。
千尋や後の子がどちらに似るかの参考資料として莉乃サイドは実家から郵送してもらったのだ。
「光圀ってどんな子だったの?」
「母さんと買い物に行ったり、本を読んだり、父さんとちょっとだけゲームしていたこともあったかな?」
「インドア派だったわけね。」
「それは莉乃もだろ?」
「まぁね。千尋もインドア派になるのかな?」
「かもな。まぁ、この町は古墳に防人の跡があったり、歴史の町だから。歴史に興味を持つかも。」
「ってことは見た目は私、中身は光圀になるのかな?」
「・・・」
タイムスリップしてきた娘の千尋に会っている光圀にとって正解としか言えない。
「まぁなににしても、良い子に育てよう。愛情を持って育てればそうなるさ。」
「そうだね。」
二人は笑顔を浮かべながら理想の娘像を考えていた。
落語や時代劇、歴史といった古いものを大切にする女の子に千尋がなるのはまだ先の話だ。