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僕には好きな人がいます。
その方は、夏の強い日差しの中で咲く
向日葵のようではなく、厳寒の冬に彩られた雪月花のようでもなく、晩秋の月夜に照らされるススキノでもありません。
春の、柔らかでいて、穏やかな陽気に似ているのです。
新芽のような
脆弱さ、それでいて、穏やかな海風のような彼女の声を聴くたび、僕の心は鷲掴みにされるような感覚を覚えます。
これは“愛”ではなく、“恋”なのです。愛と恋が違うのは、高校生の僕にとってでも、なんとなく分かります。
愛よりは深くなく、愛よりは密接な関係を抱けない。ジレンマだけが僕の中を排水溝の水のようにグルグルと渦を巻きながら存在するのです。
出会いから好きになるのには時間がかかりませんでした。人を好きになるのに、五分とかからないものです。
それはカップラーメンのようにお手軽で、かといってバカに出来ないものです。なんせ世界で一番売れているラーメンはカップ麺だから。
自らの恋路をカップラーメンだと例えたとするのならば、僕はまた姉に何を言われるものでしょう。
「しょうもない」その一言で一蹴されてしまうかもしれません。それでも――。
真面目な恋も、ふざけた恋も、全て一緒だと誰かが言ったような気がするのは、僕のご都合主義な頭が作り出した幻想なのでしょうか?
さあ、野暮はそろそろ止めて、僕の物語を語りましょう。
『ノルマンディー上陸作戦』と名付けられた僕の恋の物語。
世界最大規模の上陸作戦名が付けられたこの物語は、僕の人生のわずかな期間しかないことでしょう。
しかし、それが物語というもの。紙芝居だって、永遠に続くものなんてありませんから。
難攻不落の要塞。それを突き破ろうとする僕の奮闘。
この世界は現実的であり、誰かの妄想のよう。
そこに僕はいるのです。