06
「哲也君はもう帰っていいよ」
「え? でも」
「もう面会時間は終わりでしょ。これからは女の子だけのお話合いだから。ねえー」
「ねえー」
矢神の言うとおり、面会時間は間もなく終了となる。困惑する椎名をよそに、矢神は早く帰れと言わんばかりの雰囲気を出す。さらに彼女を持ち上げるようにして、木崎も同調する。仕方なく彼は「じゃあ、また」と言い残し、病室を後にした。
「ええっ! それ本当?」
「本当なんですよ。実は――」
ドア越しから聞こえてくる二人の声。弾むような矢神の声と、不敵さを秘めた木崎の声。これが俗にいう『ガールズトーク』というやつか。椎名は彼女に自分と小木曽以外の知り合いが出来たことを喜ぶと同時に、若干の寂しさを覚えた。
――これじゃあ、久美ちゃんと一緒だな。
椎名は自嘲した。やはり彼女と自分は似ているのだ。大切なパートナーを奪われる気持ち。初デートの時こそ彼女をバカにしたが、それは間違いであったと、彼自身、今更ながら思う。椎名は
忸怩を覚えながら、病院を後にした。
「で、さらにですね――」
「うんうん! それで? それで?」
矢神の病室からは、二人の話し声が途切れることなく続いていた。