プロローグ
01
 不滅の愛を誓ってくれますか?
 
 
 春の(よい)に漂う沈丁花(じんちょうげ)の香り。秋の金木犀(きんもくせい)と同じくらい香るその匂いは『沈香』という香りに似ており、春の到来を告げる匂いとされている。
 
 原産地は中国で、日本は室町時代から栽培をされていたとされる(いにしえ)深き花である。二月ないし、三月に淡紅色の花弁を広げ、咲き乱れる。強い芳香はその存在意義を強くアピールするためか。
 
 春といえば真っ先に桜を思い浮かべる。僕もそうだった。沈丁花(じんちょうげ)など、見向きもしなかった。せいぜい有名な『あの歌』に使われているだけだと思っていたのだ。
 
 
 沈丁花(じんちょうげ)の花言葉は『栄光』『不死』『不滅』『歓楽』『永遠』。貴女はいくつ僕に与えてくれることでしょう。僕もいくつ貴女に与えることができたのでしょう。
  
 
 
 
 もう一度、問います。
  
 貴女は不滅の愛を誓ってくれますか?
 
 久美――。


( 2013/11/17(日) 00:39 )