第二章
01
 繁忙期こそ終えたが、哲也の仕事はまだ多忙であった。休日出勤はなくなったものの、平日は変わらず帰りが遅い。
 新人教育を任されている哲也は、彼らに仕事を教える(かたわ)ら自分の仕事もこなす。入社以来、ここまで多忙な日々が続くのは初めてのことであった。
 
「ただいま」
 
「おかえり。今日もお疲れ様」
 
 真っ暗な家に戻り、電気を点ければパジャマ姿の久美が出迎えてくれた。あくびをしながら、まるで飼い主が帰って来た猫のようだ。
 
「まだ起きてたんだ」
 
「これから寝ようと思ってたところ。ご飯温めるね」
 
 久美はそう言うとトコトコとリビングへ行き、作っていたご飯を温めだした。哲也は申し訳なさそうに自室へ行き、着替えを済ませた。
 
「ねえ、大丈夫なの?」
 
「なにが?」
 
 着替えを済ませた哲也がリビングへ行き、椅子に腰かけると久美が心配そうに尋ねてくる。哲也とは長い付き合いだからこそ分かるが、いくらなんでも多忙過ぎであった。痩せたというよりも、やつれた哲也が心配でならなかった。
 
「仕事よ。いくらなんでも忙しすぎない?」
 
「うーん。まあ、そういう時期だからしょうがないよ。先輩もみんな通って来た道だから」
 
 作り笑いを見せる哲也だが、久美には痛々しく思えた。だが本人が大丈夫だと言っている以上、何も言えなかった。温めた夕食をテーブルに並べ、哲也の向かいに座る。
 
「そういえば最近小木曽さんとゆりあちゃんに会って来たんでしょ? どうだった?」
 
 二日前に久美は小木曽と木崎に会って来た。木崎とはよく会うのだが、小木曽とは久しぶりに会い、盛り上がったと哲也は聞いていた。話題を変えたかった哲也はその話を久美に振る。
 
「小木ちゃんは相変わらず休みが取れないって嘆いていたわ。『また結婚から遠のくー』って。ゆりあちゃんも変わらず子供たちに囲まれて幸せみたいだよ。『私は彼氏がいなくても子供たちがいますから』って小木ちゃんに言ってたな」
 
「そうなんだ。ははっ、みんな変わらないようだね」
 
 哲也と久美がそれぞれ環境を変えていったように、小木曽と木崎の環境も変わっていた。
 小木曽は久美が以前入院をしていた病院から変わり、別の病院で婦長をしている。総合病院で、夜間患者の受け入れをしているところだけあり、哲也に負けないほど多忙な日々を送っている。本人は結婚をし、身を固めたいのだが、多忙でそれも叶わない。
 木崎は高校卒業後、短大に進学し、保育士となった。常に勉学では危ない橋を幾度も渡って来た彼女だが、子供に好かれる要素があるのか、園でも人気の先生として働いている。


■筆者メッセージ
明けましておめでとうございます。
更新ペースは遅いのですが、こちらの作品も何卒よろしくお願い致します。


クロスさん

ありがとうございます♪
ゆっくり書いていきますね。
( 2014/01/01(水) 08:19 )