「白昼夢」
08
 あにはからんや連絡はすぐに来た。近々空いている日はないかとの問いかけにカレンダーを見た。
 仕事、そして美月の体のことを考えて日にちを伝えると集合場所と時間がすぐに送られてきた。日にちの指定をしたが時間は向こうが勝手に決めてくるとは。
 旧友とはいえ異性である。ましてこんな田舎で自分たちのことを知りもしない相手にでも見られたなら変な誤解を招く可能性がある。だから僕は美月に愛佳と会う許可を取ることにした。

「なあ、あのお祭りあったじゃん」

「うん」

「愛佳と会ったんだ。偶然だよ、偶然」

 僕の言葉に美月は目を丸くした。

「へえ、愛佳が。この辺に住んでるの?」

「いや、それは聞かなかったけどたぶんそう。で、久しぶりに会おうかって話になっているんだけど」

 美月も来たがるだろう。そうなった場合、愛佳にはどう説明をしようか。なんで二人きりで会う必要があるのかと問い詰められそうだ。

「いいわね。いつなの?」

「来週の木曜日」

「あっ、その日私も友達と会う日だ」

「友達?」

「うん。ほら、あのお祭りの日に二人いたじゃない。で、あの子たちが友達に話したみたいでみんなで集まろうかって。もちろん女子だけで」

 女子だけと強調するのは美月も僕と同じ心配をしているからか。しかし朗報である。タイミングの良さに気分が一気に軽くなった。

「でも美月が来ないとなると断ったほうがいいかな」

「別にいいよ。行って来なって。こっち来てから誰とも会ってないわけでしょ? せっかく会ったんだから行って来なって」

 許可を得るには難しい問題だと思っていたが、結末は意外なほどあっさりしたものだった。案ずるより産むが易しとはこのことをいうのだろう。

「じゃあお言葉に甘えて。美月のことも言っておくよ」

「わかってると思うけど、気を付けてね」

「ああ。ゴシップに飢えた暇人どもはどこの世界にでもいるものだしな。まったく、僕らなんて芸能人でも何でもないのに」

「今のうちに記者会見の練習でもしておく?」

「それもいいかもな」

 僕たちは笑いあった。そのおかげで体に入っていた力がスーッと抜けていくようだ。
 思えば心配のしすぎだったのかもしれない。僕は早く木曜日が来ないかとワクワクした気持ちになっていた。


■筆者メッセージ
ごっさむ!
冬は嫌いじゃ。


ア〇〇スさん
追いつかれてしまいましたか。
結局はそういうことになりますね。
( 2021/01/09(土) 19:04 )