02
放課後、体育館の裏へ来ると呼び出した主がいた。
「遅いじゃない」
そう言いながらもヘラヘラとした顔を見せる美月に僕は彼女にわざと聞こえるような溜息を吐いた。
「どうせ教室の中のゴミを持っていくだけなのに、なんでここまで呼び出すんだよ」
「いやあ、ほら臨場感ってやつ? ラブレターみたいでドキドキしたでしょ」
「全く。どうせ美月だろうなって思ったし、当番は美月だったからな」
僕が通うこの学校の決まりとして、ごみ捨て当番というものがあった。教室内のゴミを校舎裏にあるプレハブ小屋へ持っていくのだ。
今日は美月の番だった。しかしたびたび美月は僕をこうして呼び出しては手伝わせようとしてくる。
「つまんない人間ねえ。そんなんじゃモテないわよ」
「放課後呼び出されて苦言まで呈されて、なんて可哀そうな僕でしょう」
「そんなものよ。人生なんて」
「お前に俺の人生の何がわかるっていうんだ」
そう口に出した瞬間、一瞬視界が暗転した。が、すぐに景色を取り戻した。
「無駄口はここまで。さ、教室へ戻るわよ」
「戻るのならなんでここへ呼び出したんだよ。二度手間じゃないか」
美月はわかってないなといわんばかりに肩をすくめ、溜息をついた。
「みんなに見つかっちゃうでしょ。デリカシーがないわね」
「なにがデリカシーだ。バカバカしい」
人をパシリ扱いしているくせに。文句をもっと言ってやろうかと思ったが、美月はさっさと僕の横を過ぎて行ってしまった。
そのまま彼女を一人で行かせようと思ったが、僕の意図がばれてしまったのか彼女はすぐさま振り向き手招きをしてきた。
「人使い荒いな。まったく」
嫌なわけではなかった。その証拠に足取りは軽かった。
ただなんで嫌ではないのか理由を尋ねられると、明確な答えは言えそうになかった。