09
愛佳から真実を聞いて僕の中に残った感情は後悔だけだった。どうしてあの日受け入れなかったのか。どうしていたずらだと思い込んだのか。
自分を責めても美月が戻ってくることはないとわかっているのに、あれから毎日僕は自分を責め続けた。
学校も行かず部屋に閉じこもったきり僕は日々を過ごした。ティッシュがなくなって着なくなった洋服で涙や鼻水を拭った。
毎日泣いているせいで目は腫れて視界は常にぼやけている。締め切ったカーテンからわずかばかりの日が差し込むが、これが朝焼けなのか夕焼けの明るさなのかわからない。
こんな状態なのに体は尿意を覚える。と同時に空腹も感じた。
この体はまだ生きようとしている。僕は立ち上がるとフラフラとさせながら自室を出た。
扉を開けると廊下にご飯が置いてあった。ラップにまかれた食器。最初のうちは『元気を出して』などメッセージが書かれていたが、いつからだろう。何も書かれなくなったのは。
情けなかった。幼馴染を亡くして引きこもっている自分に。自分よりももっと悲しい環境にいる人はいるはずなのに。
やるせなさで僕は扉を殴った。扉は音こそ立てたが壊れることはなく、ただ叩いた手が痛むだけだった。
やり直したい。人生すべてとは言わないから、せめてあの日に戻りたい。ベッドの上でいつしか僕はそう思い始めていた。
あの日に戻れたら。
もう一度やり直せたら。
階段を下りようとしたら、目の前の視界がグラリと歪んだ。平衡が保てなくて僕はとっさに何かに掴まろうとしたが階段には手すりはなくて、そのまま身を投げ出すように落下しそうになった。
眼下に迫る階段。怖くて僕は目を閉じた。