04
ようやく重い腰を上げて浴室へと向かったねるちゃんがくれたお菓子を食べながら、私は大きく息を吐いた。
尋常じゃない疲労具合だ。泊りがけのロケは、いつもより倍以上の疲労をもたらす。忌まわしき“ブツ”は我関せずといったように今は大人しくしている。
薄い壁からシャワーの音が聞こえる。しばらくは出てこないだろう。一人部屋がいいのに、経費の問題で相部屋になってしまうことを考えると、大所帯であることが仇となっている。
仲間がいることはありがたい。けれども、時にはその存在が邪魔に感じてならない時もある。ましてや毎日のように処理している身からすれば、一日我慢することがどれだけ大変か。
ふと、私の目にねるちゃんのキャリーバッグが止まった。黒いバッグの中身は洋服が入っているはずだ。
ふいに心臓が高鳴りを見せ始めた。それと同時に、眠っていた奴が目を覚ます。私の身体は吸い寄せられるようにバッグへと向かった。
ダメだ。人のバッグを漁るなんて。犯罪者じゃないか。
頭の中ではストップせよと命じているはずなのに、私の身体は誰かに操られるようにファスナーを下げた。ジジジと金属が滑走路を沿うようにして下りていくと、彼女の私物が見えてきた。
まず手前にあったのはトレーナーだった。何の躊躇いもなしに手が伸びて、それを掴むと鼻元まで持っていく。
洗剤のにおいに混じって、ねるちゃんのにおいがする。彼女にしか出せないにおい。赤ちゃんのような甘いにおいを鼻から吸い込むと、男性器に血液が集まり始めた。
けれど、これだけじゃ刺激が足りない。衣類の中でもっともにおう物といえば、やはりあれしかないだろう。
私の手は衣類を掻き分け奥へと進んでいく。と、黒い袋が目に入った。きっとこれに違いない。ナップサックのようなナイロン生地の口元を弛めると、お目当ての物が見つかった。
鼻呼吸だけでは満足な空気を得られなくなっている。走っている最中のように身体が熱くて呼吸をするだけでも苦しい。心臓が飛び出てしまいそうだ。
私の手は袋の中へと吸い込まれると、一枚の生地を掴んだ。取り出してみると、小さなショーツだった。真っ白で花の刺繍が施されたシンプルだけど、子供っぽくない大人びたデザインだ。
メンバーの下着のにおいまで嗅いでしまうことに、もはや罪悪感は無かった。ただ己の性欲を発散させたいという純粋な欲求に抗えなかった。
クロッチの部分。もっとも嗅がれたくないであろうその部分に鼻を押し付けた。アンモニアとチーズの入り混じった独特なにおいに、鼻血が出てしまいそうだ。
早くオナニーがしたい。ねるちゃんの存在を忘れさせるほど、私の気は高ぶっていた。
ショーツごとズボンを脱ぐと、いきり立った男性器の先端はすでに射精したかのように濡れている。
「な、何しているの……」
いざ始めようとすると、背後から震えた声が聞こえた。