第4章「ねるねるねーるね」
03
 短い呻き声を上げて、欲望の塊を放出した。最近では毎日処理しなければいけない体質に変わってきた。
 すっかりとルーティンと化した行為には無駄がなかった。精液を受け止めたティッシュを丸めると黒いゴミ袋へと捨て、ウェットティッシュで男性器を拭く。それが終わると部屋の換気をし、消臭スプレーを吹きかける。

 オカズに使用したのは、ねるちゃんの写真集だ。書店で購入するや否や、胸の高鳴りを抑えつつ帰宅した。
 乾いた唇を舐め、ページを捲っていく。仕事の日は毎回会っているというのに、印刷をされた彼女の表情は新鮮味があり、興奮を引き立たせるのには十分すぎた。
 いつの間にか膨張した男性器に手をかけ、自慰を始めてフィニッシュまで持ち込むと、オカズはすっかりと『ぺーちゃんねる』から写真集へと変わっていた。

「ああ、ねるちゃん。舐めてくれるのぉ」

 男性器の先端を口元へと近づける。我ながら変態チックだと思いつつ、妄想が止められないのだ。印刷された唇へと擦り付けると、漏れ出たカウパーが赤い唇を歪めた。
 ねるちゃんに舐めてもらいたい。美波ちゃんの一件であれほど深く傷ついたというのに、それを忘れたかのように私はあの快楽を求めた。

 そう。私は知ってしまった。口での快楽を。
 ザラザラとした舌の表面。温かな粘膜。相手に屈辱的な行為をさせているという高揚感。

 ティッシュが間に合わず、勢いよく飛び出た欲望の固まりは写真集を汚した。

「疲れたー」

 地方ロケを終え、ホテルへと戻ると同室のねるちゃんがベッドへと飛び込んだ。安物のベッドではないからか、ねるちゃんの体重が軽いからかは分からないが、ベッドは何の物音を立てずに彼女を受け止めた。
 ふわりとスカートが舞った瞬間、ドキリとした。ただでさえいつもオカズにさせてもらっている子である。そんな子がホテルの同室なんて、スタッフは私を殺す気でいるのだろうか。

「先にシャワー浴びてきなよ。そのまま寝ちゃいそうだから」

 気持ちを抑えつつ、私はそう提案をした。早く相手に寝てもらった方が色々と都合がいいのだ。

「んー。面倒」

 足をバタバタとさせると、スカートの奥が見えてしまいそうだ。目のやり場に困った私は、スマホを取り出し、適当なニュースをチェックし始めた。

「何見てるの?」

「スポーツニュース。新井さんの携帯電話が壊れたみたい」

「誰それ? しかも携帯が壊れたとかどうでもいいし」

 ケラケラ笑うねるちゃんに、私も声を上げて笑った。

「でも野球選手ってすごいよね。これぐらいでニュースになるんだし」

 私なんてもっとすごい秘密を持っているのに。私はひとしきり笑うと、次のニュースを読み始めた。

( 2018/04/25(水) 18:49 )