第1章「ペーチャンネル」
03
 男性器が形を変えていく。柔らかだった芋虫がサナギになるかのように、男性器は棒のように固くなり、熱を帯びた。
 寝起きの状態に戻ってしまった男性器を見た私は、また涙が流れ出た。もうこの病気とは一生付き合っていくしかないのか。

 その後の私はインターネットで男性器のことを調べた。もちろん、解決方法なんて載っているはずもなく、性転換手術のサイトへと飛ばされるのが常だった。

「可愛い寝顔……」

 欅坂に加入後、梨加ちゃんの寝顔を何度も見たことがある。可愛らしい顔立ちは目を閉じて口を半開きにさせても変わりはない。
 けれど、以前と違う感情が私の中に生まれている。可愛らしいという感情と共に、“ムラムラ”する気持ちがあるのだ。これは以前の私になかったものだ。

 私はこのムラムラとした気持ちの鎮め方を知っている。いや、知ったという方が正解か。
 梨加ちゃんの眠りの深さを確かめるべく、耳元で名前を呼んでみるも反応がない。頬を突っついてみても反応がない。仕事で疲れているのか、かなり深い眠りのようだ。

 辺りを見渡す。もちろん部屋にいるのは私たちだけだ。耳をそばだてても、エアコンのわずかな風の音しか聞こえない。
 私はもう一度耳元で名前を呼び、肩をトントンと叩いた。一瞬だけ起きそうな気配を見せたけれど、手だけがピクリと動いただけだった。

 ムラムラとした気持ちが雨雲のように広がる。私はゆっくりとスカートを脱いだ。ショーツは朝と同じようにテントを張ったかのように膨らんでいる。
 男性器での自慰を覚えたのは、解決方法を調べている時だった。画面を見ながら男性器がなぜか膨張し始めたのだ。
 それと同時に、ムラムラとした気持ちが湧いて出てきた。私の手は無意識に男性器へと伸びていた。

 私だって健全な人間だ。自慰くらいしたことがある。けれどもそれはあくまで女性器での話で、男性器は初めてのことだった。
 やり方がよく分からなかったけれど、検索をすればやり方なんてすぐに分かった。ご丁寧にイラストまで添えられており、私はその手順を踏んだ。

 結果は画面を汚した。白濁の液体が水鉄砲のように飛び、パソコンの画面を直撃した。あまりの飛び具合に驚きと共に、何ともいえない達成感のようなものを感じた。
 短距離走をしたかのような息苦しさの中、私は男性器での自慰の快楽を知ってしまった。

「梨加ちゃん、ごめん」

 ショーツを下げると、男性器がブルンと飛び出した。朝と同じぐらい、いやそれ以上に硬度を増している。
 そう。私は男性器の勃起でも興奮具合、体調によって硬度の差異があることを覚えた。今の状態は限りなく興奮状態が高い。
 罪悪感はある。けれど、それ以上にこの気持ちを鎮めたくて仕方がなかった。私は剥き出しとなった男性器に手を添えた。

( 2018/04/25(水) 18:40 )