第0章「夜用でも安心できません」
01
 夢を見ていた。
 栗毛色の牡馬に跨って芝生を駆けている夢だ。牡馬はリズムよく駆けていく。蹄の音が心地よく耳に響く。

 景色は緑からいつの間にかビル郡に変わっていた。けれど私は馬を走らせ続ける。ジョッキーさながらに走らせていると、今度は雲の中に入ったように真っ白く変わっていた。
 どれぐらい走り続けただろう。急に視界が開けた。そこは空だった。真っ青な空。馬はその空に落ちていくように愚直に駆けた。

 あっ、落ちる――。
 そう思った瞬間、パッと目が覚めた。

「あー、ビックリしたぁ」

 心臓が今になってドクドクと早鐘を打ったような鼓動を見せ始めた時だ。私は違和感を覚えた。
 下腹部に違和感がある。お漏らしとは違う。生理とも違う。ピンと“何かが張っている”。私はゆっくりと布団を捲ると、ズボンの股の部分が盛り上がっていた。

 なんだ? 恐怖心の中に好奇心が入り混じっている。更にその中に嫌な予感まで含まれていた。自分の身体に異常をきたしているような、そんな恐怖感に怯えながら私は恐る恐るズボンを脱いだ。
 綿のパンツはズボンの時と同様、盛り上がりを見せている。臀部にはキャラクターが描かれた子供の時から穿き慣れた下着なのに、こんな盛り上がりを見たことはない。

 ナプキンか? CMで放送されている生理用品を着用しているが、犯人がそれだとするとただでさえ縁起でもない夢を見た後の寝起きに、更にドッキリと仕掛けるなんてまるで使用者を安心させない商品だ。
 私は唇を舐めると、一気にショーツを下ろした。

「なんじゃこりゃあ!」

■筆者メッセージ
個人ブログで連載をしている作品です。
フタナリ注意。
( 2018/05/02(水) 00:00 )