第六章「恭一郎」
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 風呂から上がった恭一郎は、キッチンの横にある棚から今夜飲む酒を選んでいた。ずらりと並ぶ酒瓶。バーのように並ぶ酒瓶は、圧巻だった。恭一郎の自慢のコレクションでもある。
 麻衣がこの酒を飲んでいることはずいぶんと前から知っている。だが、恭一郎はそれを咎めようとはしなかった。見てみぬ振りをしているのは、彼女と同じものを共有したいからだった。

 麻衣のことが好きだから?
 そうだ。恭一郎は麻衣のことが好きだった。歪な愛であることは百も承知している。メイドと主人では、身分が違うのだから一緒に酒を飲み交わすことが出来ない。立場を同じにしては、せっかく調教してきたものを水泡に帰してしまうのと同じだった。

 今夜の気分は洋酒だった。酒瓶を見渡し、目に入ったのはバカルディエイトだった。オン・ザ・ロックが最も引き立つラム酒だ。
 恭一郎は酒瓶を手に取ると、キッチンの棚からバケツを取り出し、冷凍庫にある氷をそこへ一気に流し込んだ。氷で一杯になったバケツの中へバカルディエイトを突っ込み、グラスを手に取ると麻衣の部屋へと向かった。

「入るぞ」

 使用人の部屋へはノックなどいらない。オナニーをしていようが、鼻くそをほじっていようがお構いなしだ。
 だが、突然の侵入にも麻衣はいつものようにベッドで髪をブローしていただけだった。この女はいつも自分が来ることは分かっているから、綺麗にしているのだ。

「いつも同じじゃなくて、たまにはオナニーでもしてろよ」

 自分のために綺麗にしているのは悪くなかったが、いつも同じだと飽きてくる。たまには動揺した姿を見るのも一興だろう。

「はい。申し訳ありません。かしこまりました」

 ドライヤーのにおいをさせながら、機械のように麻衣は返事をした。本音はそんなこと微塵(みじん)も思っていないくせに。

「今日は、そうだな。ケツの穴にこれを挿しながらオナニーしてろ」

 いつもの木の椅子に座ると、バケツをサイドテーブルに置き、引き出しから取り出したのはディルドだった。紫色のそれを麻衣に向かって投げると、恭一郎は口笛を吹きながらオン・ザ・ロックを作り始めた。

「はい。かしこまりました」

 店員が注文を受けるように、マニュアルのように麻衣がそう答えると、彼女は着ていたメイド服を脱ぎ始めた。恭一郎はそれを見ながら、作りたてのオン・ザ・ロックを飲み始める。
 室内に音楽はかけない。淫らな声を上げる麻衣の声が聞こえなくなるし、おまんこから漏れるいやらしい水音も聞こえなくなってしまう。
 衣擦れの音もまた一興だった。丈の短いスカートは、恭一郎にとって譲れない部分でもあった。見えそうで見えない。そして、油断していると見えてしまうこの短さが分からない奴はエロリズムを理解していないのだ。

 低いモーター音が聞こえる。全裸になった麻衣がこちらに尻を向けながらディルドを肛門へと挿れようとしている。桃のような尻。十五歳だった麻衣の身体はすっかりと成熟した女の身体になっていた。
 恭一郎はそれを見ながら、次はどんな戦略へ打って出ようか思案した。

■筆者メッセージ
オン・ザ・ロックもいいのですが、寒がりなところがあるので、お湯割の方が好きだったりします。


読むだけの者ですがさん

間を挟まなきゃね、いけないんですよ。
メインは官能じゃありません。ちゃんとストーリーを立てないと。
その件に関しては何とも言えませんね。本人たちの意向を尊重してあげるのが一番でしょうし。もちろん仰ることも分かりますけど。
( 2016/01/17(日) 08:00 )