第六章「恭一郎」
01
 リビングに入ると、控え目な花の芳香がした。テーブルの上にある花瓶には色とりどりの花が生けてあった。恭一郎は、麻衣が花を買って来たいと言っていたのを思い出した。
 麻衣は花が枯れると、買ってくる。自分のお小遣いから捻出しているようだ。これまで、一度たりとも恭一郎に買って欲しいとは言わないでいる。

 恭一郎は花に興味がなかった。見ていて心安らぐことなんてないし、強過ぎる芳香は苦手だった。だから、麻衣が買ってくる花は、自分のことをよく分かっていてくれていると思う。
 麻衣が花を買うようになった日のことは覚えている。渚沙を夢宮にリリースした翌日からだ。会社に向かっている途中、麻衣が帰りに花屋へ寄っていいか尋ねてきた。
 なぜ花? その時は不思議に思ったが、やましい物でもないし、「強過ぎる芳香だけは止めろ」とだけ言っておいた。その夜、帰宅するとリビングのテーブルの上に花が生けてあった。

 椿家に飾られた花。色とりどりの花はすっかりと椿家に定着している。恭一郎は黙ってそれを眺めていると、麻衣の手が下腹部へと伸びてきた。

「なんだ。自分の方から求めて。俺がいなくて寂しかったか」

 栗色の髪を撫でてやる。外国人のような髪色にしたがる日本人の女を見ていると、あまりに似合わず滑稽(こっけい)に見えるが、麻衣だけは違った。この女は栗色の髪がよく似合っている。
 柔らかな毛の感触を(てのひら)で楽しむと、ペニスが外気に触れた。

「今日も一日お疲れ様でした」

 外気に触れたのはわずかで、すぐに温かな粘膜に包まれる。チュパチュパといやらしい水音に混じって、腰の辺りから快楽の波が訪れる。

「いいぞ、麻衣。上手いものだ」

「麻衣には勿体無いお言葉です」

 男を自分しか知らないのが、恭一郎にとって誇らしかった。何人も相手にしている風俗嬢やアダルトビデオに出てくる女たちとは違う。生粋の箱入り娘をこうしてフェラチオさせているのだ。
 最初の頃はずいぶんと下手くそで恭一郎は手を焼いた。歯がペニスに当たり、喉奥まで突き入れれば、苦しさから嘔吐した。胃液がペニスを汚し、不快なにおいが漂う中で、恭一郎は粘り強く麻衣を調教した。
 おかげで、麻衣の上達ぶりは目を見張るものがあった。恭一郎は目を細めながら、麻衣の奉仕を受け入れている。

 蝶よ花よで育てられてきた女をフェラチオさせる。聖菜は志半ばで死んでしまい、渚沙は何度やらせても泣くだけでちっとも上達の気配が見えなかった。
 このテクニックを他の男で試したのならば、どこまで稼げるだろう? 恭一郎はふとそう考える時がある。風俗嬢でも、アダルトビデオに出演させても、天下を取れそうな感触はある。だが――。

「麻衣は俺の“物”だ。誰にも渡してたまるか」

 我ながらいい買い物をしたと思っている。インドへの参入を推薦した時と同じくらい、恭一郎にとっては誇れるものだった。
 身体の奥深くから押し寄せる快楽の波。逆らうことなく身を任せると、恭一郎のペニスが脈打ち、ドクドクと欲望の塊をメイドの口の中へと解き放った。

■筆者メッセージ
第六章の始まりですが、この章も短いです。
恭一郎の章を挟んで次のメンバーに移行します。


よだしょさん

ツイッターではいつもお世話になっています。
ありがとうございます。


読むだけの者ですがさん

デスデス。
松中引退撤回はそうですね。
素直に引退すればいいのにって思いました。ファンなんですけどね。
( 2016/01/16(土) 02:21 )