第四章「聖菜」
08
 ペニスを入れるべき口は固く閉じられ、拒絶を表している。さて。どうしたものかと悩んでいたが、恭一郎は奥の手を使うことにした。

「そんなに舐めたくないか」

「当たり前じゃない。誰があんたの汚いブツなんて舐めるものか」

 不敬な態度を見せるメイドだ。麻衣と同様、丈の短いスカートから覗く白い太ももを見ながら、恭一郎はわざとらしく溜め息をついた。

「じゃあしょうがないな。おい、あれを持って来い」

「かしこまりました」

 いつの間にか恭一郎の背後には麻衣が立っており、彼女はバッグの中から道具を取り出した。

「はい」

 麻衣が恭一郎に手渡したのは、浣腸器だった。中にはすでに液体が入っている。聖菜はそれを見た瞬間、首を傾げたが、すぐに何の道具か分かって小さな悲鳴を上げた。

「押さえつけておけ」

「はい」

「止めろ! 離せ!」

 恭一郎の一言に麻衣は聖菜を押さえつけた。年上だが、すでに麻衣の方が体格は上回っていた。

「動くなよ」

「止めろ、止めろ、ああー」

 肛門周りまでビッシリと生えた毛を掻き分け、先端は蕾に突き刺さった。恭一郎はポンプを押す。

「よし。離していいぞ」

 液体が全て聖菜の中へ入ると、恭一郎は麻衣を聖菜から離させた。

「お腹が……あんた外道よ、最低の人間よ……」

 浣腸などされたことのない聖菜は、初めて味わう苦痛に顔を歪ませた。腹の中がグルグルと掻き回されているようだ。

「お前に選択肢をくれてやる。フェラをするのならトイレへ行かせる。だが、しないのであれば行かせない。さあ、どっちがいい。プライドの高いお前のことだ。こんなところで糞なんて漏らしたくないだろう」

「外道が……」

 犯すだけでは飽き足らず、こんな真似までしてくるとは。もはや狂気の沙汰だ。奴は狂っている。聖菜は腹部を押さえながら、ただ苦痛に耐えるしか出来なかった。

「ほら。どうするんだ。このままじゃ漏らしちまうぜ」

 床に芋虫のように(うずくま)る聖菜の腹をめがけて、恭一郎はわざと蹴りを入れた。

「や、止めろ、蹴るな」

「どうするんだよ。フェラをするのか、しないのか」

「だ、誰があんたのなんて舐めるものですか……くぅ」

 ギュルルと聖菜の腹から音が鳴ったのを、恭一郎と麻衣は聞いた。恭一郎は口角を吊り上げたが、麻衣は表情を変えずに立ったままだった。

「いいのか。漏らしちまうぞ」

「ああー!」

 猛威を振るうグリセリンに、ついに聖菜は耐え切れなくなった。ホースが勢いよく水を出すかのように、聖菜の蕾から液体が一気に溢れ出た。

「止めろ、見るなあ! 見るなあ!」

「おーおー。よく出る、よく出る」

「ああー! 畜生! 畜生!」

 水気のある茶色い汚物が濁流のように流れ出る。本来は白い陶器に排出されるべきそれは、フローリングに敷かれた絨毯にボトボトと落ちていく。

「くっせえな。何を食ったらそんな臭いがするんだよ」

 (あざけ)る恭一郎の声を聞きながら、聖菜の目から涙がこぼれ出た。

「畜生……畜生……畜生……」

 ヒリヒリと痛む肛門から、もはや自分の意思とは関係なく出続ける汚物。屈辱にまみれた聖菜は、ただ唇をギュッと噛んで、溢れ出る涙を見せないように顔を地面に突っ伏せた。

■筆者メッセージ
いやあ。正月から何を書いてるんでしょうね、僕は。
けれど流れ上でね、たまたま今日になってしまったという感じです。
( 2016/01/01(金) 19:36 )