第四章「聖菜」
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 何が起きたのか分からなかった。(あご)に強い衝撃を受けたまでは覚えている。が、その後の記憶が聖菜にはなかった。
 時間にすれば数秒のことだった。顎に恭一郎の拳が当てられ、聖菜は一時的に気を失った。意識が戻ると、頭の中がぐらんぐらんとするのを覚えた。

「いってえな。やっぱり手じゃなくて足にしておけばよかった」

 近いはずの恭一郎の声が遠くに聞こえる。口の中から鉄の味がした。

「じゃあ、もう挿れるか」

 入れる? 何を?
 コーヒー? まさか。

 聖菜の頭は恭一郎が言った言葉を理解出来なかった。
 ただ、自分の下腹部に“何か”が侵入しようとしているのは分かった。

「え……まさか」

 それがペニスであることを悟った直後、聖菜は身を引き裂かれるような痛みを覚えた。

「あああああああああ!」

 けたたましく叫ぶ。そう。それはまさに獣のような声だった。まだ濡れてもいない女性器に、無理やり恭一郎のペニスが入れられた。

「やっぱり処女はきついな。ま、濡れてねえから当たり前か」

「ああああああああ」

 身体を真っ二つにされるような痛みに聖菜の目から勝手に涙が流れ出てきた。二十一年間守り続けてきた純情。それがあっけなく恭一郎によって破り捨てられる。

「どうだ。処女を卒業した今の気分は」

 ヘラヘラとした口調で訊かれた聖菜は、溢れ出る涙を拭った。

「絶対に赦さない! 殺してやる! あんたなんて殺してやる!」

 下腹部の痛みから、聖菜は強い吐き気を覚えた。自分の処女を破った男のことを睨む双眸(そうぼう)は、怒りの炎が灯っている。
 その目を見ながら、恭一郎は鼻を鳴らした。

「やってみろよ。出来るものならな」

 そのまま抽送(ちゅうそう)を始める。ギチギチとした中でペニスを強引に引いて、今度はまた深々と刺す。それだけなのに、殺すと言った女はまた耳をつんざくような悲鳴を上げた。

「うるせえよ。どうせなくならもっといい声でなけよ」

 うるさい目覚まし時計を止めるかのように、恭一郎は聖菜の頬を(はた)いた。

「畜生! あんたなんて絶対に赦さないんだから……絶対に、絶対に殺してやる」

「ふうん。好きだな。殺してやるのが」

 恭一郎は聖菜の言葉を他人事(ひとごと)のように聞き流すと、抽送のペースを速めた。

「や、止めろ、痛い、痛い」

「早くチンポを喜べるまんこになることだな」

 きつく締め付けられ、恭一郎もまたペニスが痛かった。こんなことならばローションでも垂らせておけばよかった。後悔しながらも、恭一郎の動きは止まらない。
 
「あんま気持ちよくねえ玩具だな、おい」

「だったらこんなおぞましい物、さっさと抜きなさいよ」

「断る。まずは中に出すことが先決だ」

 中に出すと言われ、聖菜の吐き気が一気に込み上げてきた。この男は初めて会って、いきなりレイプまがいのことをし、なお()つ自分の中で果てようというのか。

「ふざけるな! 抜け! 抜け!」

 苦痛に顔を歪めながら、何とか聖菜は脱出を試みる。が、それは限りなく無駄な動きだった。先ほどから消耗し続けた体力では、恭一郎から逃れることなんて不可能に近かった。

「そろそろ出そうだ」

 こんなまんこでも射精感は生まれるものなのだな。恭一郎は身体の反応を面白がりながら、迫り来る時を待った。

「嘘! 止めろ、止めろ、中には絶対出すな!」

「うるせえ。どこで出そうが俺の勝手だろ。ほら、処女喪失記念のプレゼントをくれてやる。ありがたく思えよ」

 下腹部に刺さるペニスがビクビクと(うごめ)いたのを聖菜は確かに感じた。

■筆者メッセージ
今夜はどうしよう。
ガキ使はマンネリ感が否めないんですよねえ。
田中のタイキックの件は面白いですけど。
紅白もなあ。流行にすっかりと疎くなりましたし、そもそも人選に不満を持っていますし。
じゃあ見るなよって感じですよね。
( 2015/12/31(木) 15:38 )