03
麻衣が初めて恭一郎から貰った物は、メイド服だった。丈が短く、ちょっとでもしゃがめば下着が見えてしまいそうなほどの長さのメイド服を見た麻衣は、露骨に顔をしかめた。
その時だった。腹部に強烈な痛みを覚えたのは。身体をくの字に曲げ、苦悶の表情を浮かべる麻衣に、恭一郎の冷徹な目が突き刺さるように向けられていた。
まさか、この人私のお腹を殴った?
痛みに悶えながら麻衣は何が起きたのか分からなかった。痛む腹部を押さえながら、もしかしたら恭一郎が殴ったのかもしれないと思った。
「俺に不満気な顔を見せるな。不服な面をするな」
麻衣の髪の毛を引っ張りながら立たせると、恭一郎は言い放った。抑揚がなく、機械のように無機質で冷徹な言い方だった。
「お前は俺に売られた。そして俺はお前を買った。お前はもう俺の所有物なんだ。所有物が持ち主様に反抗するな」
今度は麻衣の目にも見えた。恭一郎の膝が自分の腹部にめり込むところを。
「ぐうう」
幼い頃、父親に怒られたことは何度もある。それでも暴力を振るわれたことのない麻衣にとって、男に暴力を振るわれるのは初めてのことだった。
しかも相手は初めて会った男。恐怖と痛みで麻衣の下腹部から尿が漏れた。
「お前は今日から俺の人形だ。分かったな」
身体を折り曲げて苦悶の表情を浮かべる麻衣の頭に、恭一郎の靴が乗せられた。屈辱的なはずなのに、麻衣はただ泣きじゃくるだけで、それを振り払おうとはしなかった。
そう。あの時点で二人の立場は明確になった。持ち主と所有物。所有物に人としての感情はいらない。溢れ出る尿をせき止められずに、麻衣はただ運命を受け入れるしかなかった。
それから――調教が始まった。そう。あれは文字通り、調教だった。犬の躾のように、麻衣もまた恭一郎によって躾けられた。
だが、それは幼い子供が親に躾を受けるようなものではなかった。モノとして――溢れ出る性欲の
捌け口としての躾だった。
表向きはメイドとして恭一郎の身の回りの世話をし、裏では日々性欲の
捌け口として
蹂躙され続けた。生理の日を除く以外、毎日女性器にペニスが挿入された。生理の日でも、口や胸を使った愛撫を強要され、麻衣は見も心も壊れ果てた。
そう。麻衣は知った。抗うよりも諦めることの方がいいことを。希望を見出すことよりも、いっそ壊れてしまった方がいいということを――。
あれから六年。六年の月日が流れた。そう。文字通り麻衣にとって、六年という日々は水が流れるかのように、流れた。十五年間の中での六年間は輝いていたはずだった。少なくとも、十五歳からの六年間よりも。
それなのに、麻衣は十五歳より前の記憶があやふやになっていた。ただ、恭一郎との出会いだけが、昨日のことのように身体に染み付いていた。