アイドルのSP
出会い
01
とある都内のボクシングジム。
「しゅっ!しゅっしゅっ。」
今日も熱心に練習に取り組む
青年がいた。
「慎一!スパーリングするぞ!」
トレーナーから声をかけられる。
彼の名前は牧瀬慎一。
ボクシングを始めた理由は
世界チャンピオンになるため!
ではなくて、はじめの一歩をみて
漫画に出てくる必殺技を覚えたい
と考えたからだ。
当然、漫画のような必殺技は
教えては貰えなかったが
やってるうちにボクシングそのものが好きになり、5年もジムに通っている。
「みきおさん、俺スパーリング
嫌だっていつも言ってるじゃないですか!」
トレーナーに文句を言う慎一。
「文句言うな。ご指名だそ。
ぜひ、お前と打ち合いたいんだと。」
そう言い慎一にグローブを
付けるトレーナーのみきお。
ほとんどのボクシングジムは
必殺技を教えてくださいという
慎一を門前払いしたが
みきおだけは受け入れ5年間も
熱心に指導してくれている。
「ご指名って、誰からですか?」
慎一がみきおに尋ねると
「こないだ東日本新人王になった
松島くん。
お前のがジムだと先輩だから
しっかり相手してやれよー。」
リングの上には東日本新人王に
輝いた松島が準備をしていた。
「慎一さん!お手柔らかに
お願いします。」
笑顔でいう松島に
「やだ!なんでプロでしかも
期待の新人王と俺がやるの?
これいじめですよ!
おれ怪我しますよ!」
駄々をこねる慎一に
「終わったら焼肉おごってやるから!」
とみきおは言った。
「焼肉?い、一年ぶりだ。
やります!喜んで!」
一人暮らしで就活中の慎一にとって
焼肉ほどのご褒美はなかった。
「それじゃ、3分2Rね」
カーン。
スパーリング開始のゴングが鳴った。

ゆーと ( 2018/09/11(火) 02:24 )