本編A 『夕焼け』
X-3

 駅のホームの反対側に彼女はいる。何かをじっと見つめている。僕は線路を挟んで向かいにいる。僕は手紙を握りしめている。
 急行の通過の知らせが向かいのホームで鳴った。彼女は何かから顔をあげた。僕と目が合う。彼女の丸い目が大きくなったような気がした。僕は叫ぶ。
「僕は貴女を一目見たとき――」
 列車の轟音に掻き消されたかもしれない、彼女に届いてないかもしれない。
 列車が駅を過ぎ去り、反対側のホームが再び現れた。
 彼女は居なかった。
 緋色の空がぼやけた紺色に変わっている。茜色の空が恋しくて、僕は貴女の名を叫ぶ。


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■筆者メッセージ
5話構成で短いですが、これでこの話は終わりです。
本編Bを鋭意執筆中なので、また会いましょう。
お目汚し失礼いたします。
三毛虎 ( 2016/02/14(日) 10:30 )