美しい桜と音-夏休み編-









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第6章
原因は悠太ではなく…
「何だよ優希、こんな朝早くからさ…」

頭をボサボサかきながらやって来た悠太。悠太はすごく朝が弱かった。

「悪いな悠太、お前にどうしても言いたいことがあってな。」
「言いたいこと?何だよ?」
「それはもう2人来たら話すから。」
「もう2人?誰だよそれ?」
「それは来てからのお楽しみ。」

愛佳はそう言ったが、内心ビクビクしていた。ここからどうなっていくのか…そして…

「ん?麻友…と何で尚が?」

キーマンの尚・麻友が来た。麻友は察したのか俯いていた。それを優希は逃さなかった。

「さあてと集まったところで…」
「ちょ…ちょっと待てよ、何で尚がいるの?」
「悠太質問は悪いが待ってくれ。まずは俺から麻友に聞きたい…悠太に捨てられたのか?」
「…………」
「麻友なんか話せよ、無視はダメだろ。」
「…………」
「言いたくないか。なら話を変える、悠太を捨てたのか?」
「!?」

悠太は優希の発言に耳を疑った。自分が捨てられた…全く思いもしなかったことだからだ。

「捨てられたって…俺が?ちょっと待てよ、優希そんな冗談…」
「尚とはいつから付き合ってたんだ?」
「え…」
「…………」
「まだ話さないか、なら尚に聞く。麻友とはいつから…」
「ちょ…ちょっと待てよ優希、話を勝手に進めるなよ。俺が捨てられた?それに麻友と尚が付き合ってた?馬鹿なこと言うなよ、いくらお前と俺の仲だからってそれは…」
「悠太すまなかった!」
「は?な…何?」
「この通りだ…」

尚は深く土下座をした。麻友は立ったままだったが、悠太は全く理解が出来ない…

「は…馬鹿な行動は寄せよ尚。どうせ俺を騙そうとしてるんだろ?優希と計画してたんだろ?ドッキリにしてはえぐいけど…」
「悠太、これを見なさい。」
「ん?な…嘘だろ…」
「これでもまだ言うかしら?」

愛佳が見せた写真に悠太は膝をついた。

「麻友と尚が…ほんとに…」
「すまなかった!」
「優希…俺に伝えたかったのは…」
「そうだ。麻友と尚はお前に隠れて付き合ってたんだ。」
「馬鹿な…そんな訳…」
「麻友はお前に捨てられたんじゃない、お前を捨てたんだ。そうだろ麻友?」
「…………」

相変わらず無言を貫く麻友、悠太は尚に近寄ると…

「俺が麻友と付き合ってるの知ってたよな?」
「ああ…」
「なら何でこんなアホなことしたんだよ?」
「すまん…」
「ふざけるなよ…なぁ!!」

尚の胸ぐらを掴んだ悠太は今にも尚を殴りそうだった。優希は悠太を抑えようとした。

「悠太…それだけは止せ。」
「離せよ優希!尚に一発殴らせろ!」
「止めろ悠太、それはほんとにダメだ。麻友も黙ってねえで言えよ。悠太の彼女なんだろ?」
「…………」

こんな状況でも全く見向きもせず、話そうとしない麻友についに愛佳がキレた。

「いい加減にしてよ麻友!!」
「!?」

いつも『まゆゆ』と呼ぶ親友が、『麻友』と呼んだことに当然反応しない筈がない…

「さっきから見てたら黙ってばっかり…何も言わずに済むと思ってるの?ねぇ?」
「…………」
「下向いてないで顔見てよ麻友!誰のせいでこんなことになってると思ってるの?」
「…………し。」
「何?」
「……たし。」
「聞こえない!」
「私…です。」
「よくも私と悠太を弄んだわね?」
「らぶたん…」
「私よりも悠太なんじゃないの?あんた事の重大さわかってるの?」
「それは…」
「わからないわよね。私に関係ないと思ってるから…」
「そんなことは…」
「じゃあ何で早い段階で悠太に言わないのよ!スルー出来ると思ってたの?」
「それは…」
「あんた、悠太が今日まで頑張ってきた努力を見事に無駄にしたね。」
「…………」
「ふざけないでよ、何で…」
「もうこれくらいにしとけ愛佳。まだまだ言いたいだろうけど…」
「だって…こんなの…」

愛佳は泣き出した。縁りを戻そうと自分なりに頑張ったのに、こんな結末になるとは思わなかった。

「愛佳ちゃん…」
「悠太…」
「俺のためにありがとう…」
「ううん…悠太の力になりたかったのに…うぇ〜ん…」
「愛佳ちゃん…」

悠太は愛佳を抱きしめた。優希はそっと尚に近寄った。

「謝りたいのは山々だろうけど、今日は止めとけ。お前もそんなつもりは全然なかったと思う。けど、普通に考えたらわかる筈だろ?」
「ああ…」
「今日はもう帰ってまた近々謝るしかないな。」
「ああ…すまねえ。お前まで迷惑かけちまって…」
「ああ…気にするな。」
「じゃあ俺帰るわ。悠太に言っといてくれ…」
「わかった。」

尚は先に帰った。

「さてと…悠太落ち着いたか?愛佳も…」
「ああ…」
「うん…」
「麻友は?」
「ごめんなさい…」
「悠太…どうすんだ?麻友と二人で話したいなら俺ら帰るけど…」
「俺はそのつもりだけど、麻友は…」

麻友は静かに頷いた。

「なら俺ら帰るわ。愛佳帰るか?」
「うん…」

優希と愛佳は帰った。悠太と麻友は悠太の家に向かうことにした。

夜明け前 ( 2023/09/28(木) 09:42 )