美しい桜と音-夏休み編- - 第5章
優希の手料理
リビングに降りると、優希達はまたソファへ寛いでいた。

「ねぇ、優ちゃんとこは親仕事?」
「ああ、そうなんだよ。共働きであまり家に帰って来ないんだよ。だから実質、美音と二人暮らしだな。」
「そうなんだ。それだと何かと大変だよね…」
「確かに大変だけど、まぁ仕方ないけどな。」
「そっか…兄妹で2人暮らしか。」

こんな話をしていると、時刻は夕方になっていた。

「さあてと、晩飯どうすっかなぁ…」
「晩ご飯?それはやっぱり優ちゃんの手料理がいい。」
「俺のか?俺の手料理ねぇ…よしわかった、美桜が来たし腕を奮って頑張るか!」
「やったー!優ちゃん期待してるよ。」

優希は久々に料理に気合を入れる。なかなか料理を存分に振る舞うことは基本ない。寧ろ今回が初めてかもしれない。だが、優希にはお構いなしだ。

(せっかく彼女が来たんだし、美桜のために頑張るか!)

そう心に誓うと、優希は調理にかかった。美桜は変わらずリビングで寛いでいる。囃し立てたりせず、優希の料理が出来るまで待っていた。焦りは禁物…美桜はわかっていた。一方の優希はあまり時間をかけないようにした。

(あまり作ったことないのを作るのはリスク高いからな…無理せず普通のでいいか。)

こういう時は、滅多に作らないのを作ろうとして失敗する。優希はそれを恐れていた。だから、シンプルな料理にした。

「美桜、退屈してないか?」
「ううん、大丈夫だよ。優ちゃん焦らなくていいからね?」
「ああ、大丈夫だよ。」

料理が出来上がっていき、美桜も…

「いい匂い。優ちゃんもうちょい?」
「もうすぐ出来上がる。もうちょっと待っててな。」
「楽しみ〜、優ちゃんの料理。」
「そうか、あまり期待すんなよ?」

そう言いながらも優希は手を止めなかった。そして…

「さあ、出来たぞ〜。」
「わーいわーい。」

美桜は子供のようにはしゃいだ。優希が作った料理は決して豪華ではないが、美桜にとったらそんなんは関係ない。

「優ちゃんの手料理…いただきまーす。」

美桜はパクッとくわえた。

「ど…どうだ?」
「うん…美味しい!優ちゃんの手料理美味しいよ!」
「よかった。どれどれ…うん!我ながら美味い!」
「優ちゃん料理上手なんだね。」
「まぁ、親もいなかったら自分らで作らないとな。料理も始めに比べたら上達するだろうし…」
「そっか。でもさ、ほんとに美味しいよ。」
「ありがとう。遠慮なんかしなくていいからな?」
「遠慮なんかしないよ。おかわり欲しいよ!」
「そっか。なら、まだいるか?」
「うん!優ちゃん、おかわり!」

優希は、こんなに美味しく自分の作った料理を食べる美桜を見て、自然と笑顔になった。今の優希はすごく幸せだった。

(美桜美味しそうに食べるなぁ。作った甲斐があったよ。)
「あ〜美味しかった。優ちゃんごちそうさま。」
「お粗末様。食ったすぐだけど、風呂入るか?」
「う〜んどうしようかなぁ…せっかくだし優ちゃんと入りたいなぁ…」
「え、俺と?」
「だってさぁ、彼氏だったら一緒に入ってもおかしくないでしょ?」
「いや…彼氏でも入るのおかしいでしょ?」
「え〜、だめなの?美音ちゃんいないんだったら、別に躊躇しなくてもいいでしょ?優ちゃん、だめ?」
「はぁ…わかったよ。」
「ほんと?」
「だけど先入っててな。洗い物してから入るから。」
「わかった。早く入って来てね。」

優希はキッチンに、美桜は洗面所に向かった。

夜明け前 ( 2023/09/26(火) 18:01 )