優希の家に上がった美桜は、真っ先にリビングに寛いだ。

「あぁ…疲れた。」
「ここ俺ん家なんだけど…」
「そんな固いこと言わずにさ。彼女が来たのに嬉しくないの？」
「いや、何で上からなんだよ…」
「何、嬉しくないの？」
「そ…それは嬉しいけど…」
「ならいいでしょ。」
(なんだろ…美桜に腹が立つけど、何故か憎めない…)

優希は自分が情けなく感じた。怒りたくても怒れない…こんな時はどうしたらいいのか？

(悠太に相談してもな…全く参考にならんだろうし…)
「ヘックシ！！」
「ん、悠太？」
「大丈夫。誰か俺の噂してるな？」
(尚は問題外だし…)
「ヘックシ！！ああ…風邪でもひいたかなぁ？」
(まぁいいや、そのうち答え見つかるだろうし…)
「ねぇ優希、美音ちゃん2週間帰って来ないんだよね？」
「多分な。でも、予定が変わることもあり得るからなぁ…」
「その時はその時で…決めた！私も2週間優希ん家泊まろっと！」
「え…」
「だめ？」
「いや、だめではないけど…」
(2週間泊まってもいいけど、俺が思うのはただ一つ。美音と鉢合わせにならないことを祈ろ…)

そう思いながら、優希はキッチンに向かった。

「優希なんか作るの？」
「別に作んないさ、喉乾いただろ？お茶用意するからさ。」
「ありがとう優希。やっと彼氏っぽくなったね。」
「やっとって…それに『っぽく』は余分だろ。」
「いいから用意して〜？」
「わかったよ…」
(なんか遊ばれてる気がする…)

嬉しいんだか悲しいんだか…優希はほんとに情けなく感じた。