戻って欲しかった
優希が声を上げてから、暫く沈黙が続いたが、由紀が話し出した。
「優希…今日呼んだのは、直接謝りたかったの…今まで謝れて無かったし。」
「…………」
「私のせいで、優希のことも考えずに好き勝手使って…」
「…………」
「初めて優希を見た時…すごく可愛かったから…それで暴走しちゃって…」
「…………」
相変わらず無言を貫く優希、しかし…
「ただ、私あの後学校辞めることになってね…」
「!?」
由紀の発言に優希は驚いた。こんなことを知っているのはほんの僅か…でも、なぜ由紀は学校を辞めることになってしまったのか?
「え、先輩なんで辞めたんですか?」
「それはね…実は、先生からハナから目をつけられてたの。」
「え…」
「私が奴隷行為に至ったのは、二年の後半ぐらいだったかなぁ…独り占めしようと思ってから、その行為が段々エスカレートしちゃって…」
「二年の後半から…じゃあ、いつから先生は…」
「その前から様子がおかしいって思ってたみたい。だけど、先生らは敢えて知らないフリをしていたの…いつか無くなるんじゃないかって。でも、当然私は知らなかったからどんどん奴隷を作って…」
「その結果、終いに見つかって…」
「そう。だから、辞めたのは優希が学校来なくなって数週間もしなかったかなぁ…」
「そう…だったんですか…」
全然知らなかった由紀のその後…先生も我慢の限界だったんだろう…
「実を言うと…私の最後の奴隷は優希、あなただったの。」
「え…俺ですか?」
「うん。それで、逃げたのも優希だけ。みんな私の指示に従ってた。」
「…………」
「でも、今思えばそれがよかったのかも。あのままずっと続いてたら、新しい奴隷雇ってたかもしれないし…ある意味優希が逃げたのは正解かもね。」
「…………」
「優希ごめんね…」
由紀は最後の方は涙を浮かべながら語っていた。優希は静かに頷いていた。
「先輩…顔上げてください。」
「優希…」
「確かに先輩に嫌な思いをさせられました。けど、先輩といた時間ほんとに楽しかったです。あんな羽目になるとは思いませんでしたけど、正直俺…昔の先輩に戻って欲しかったです。」
「優希…」
「俺を可愛がってくれる先輩に戻って欲しかった。先輩好きだったから…」
「!?」
優希から言われた『好き』。由紀は泣いてしまった。自分はなんてことをしてしまったんだと…
「ごめんね優希…ほんとにごめんね…」
由紀は優希を抱きしめた。
「先輩…泣かないでくださいよ。俺まで泣けてきますよ…」
「うん…優希。」
「はい。」
「うちの家来る?」
「先輩の家…はい。」
「わかった。行こか?」
優希は由紀の家に向かった。