助けてくれた2人の親友
その後、優希はしばらく学校を休んだ。もう由紀に会いたくなかったからだ。顔も見たくない。そう思い学校を休んだのだが、それで終わる筈がない。当然ながら由紀は優希が逃げたと思い、毎日優希を隈なく探す。だが、どこにもいなかった。由紀はあの手この手で優希を探し、終いには…
「もしもし優希?あなた、私から逃げようと思っても無駄よ?おとなしく来なさい、可愛がってあ・げ・る・か・ら。」
なんと、留守電まで入れるようになったのだ。当然優希は恐ろしさのあまり外に出れなくなった。出たら由紀に追われ、間違いなく襲われる…もう恐怖でしかなかった。そんな優希を助けたのが悠太だった。体調不良を理由に休んだ優希を不審に思い、悠太は優希の家にちょくちょく通ってた。
(あいつに何かあったに違いない。まさかとは思いたくないけど…)
「優希?」
「悠太…か?」
久しぶりに見た優希の顔はげっそりしていた。それを見て悠太は察した。
(やっぱり、あの人にやられたな…)
「優希やっぱりあの人と…」
「ごめん。お前の話を聞けばよかった…」
「仕方ないさ。俺もただの噂だと思ってた。けど、やっぱりほんとだったんだな。」
「ああ、あいつは魔女だ。自分勝手な野郎だよ…」
「そうか。よし、俺がなんとかしてやる。」
「え…でもお前…」
「大丈夫。あの人が優希をずっと探していたのを俺は見てた。」
「悠太…やられた俺が言うのもなんだが、気をつけろよ。やばいと思ったら逃げろよ?」
「ああわかってる。」
そして…
「ねぇねぇ、そこの君。」
(来たな、性懲りも無く優希を探して…)
「あんた目当ての優希はいないですよ?」
「あら、優希と知り合いなの?ちょうどよかった。なら、優希の居場所…」
「あんたに教えるつもりはない。今すぐ去れ。」
「ちょ…あなた一年生なのによく先輩にそんな口調で言えるわね。」
「だからなんだ?俺はあんたに怒ってんだぞ?」
「何で?私はあなたに何もしてない。てか初めて会ったのに私が何をしたって言うの?」
「あんたが…あんたが優希を不登校にさせたんだよ!」
「不登校?優希が?」
「そうだ、あんたのせいで優希は学校に来てないんだよ。あんたに会いたくないからな。」
「待って、おかしいじゃない?私はあいつに嘘をつかれたのよ?悪いのは優希…」
「奴隷にさせといてよく言うな?」
「な…」
「噂になってたからな、あんたの噂を。あんたが奴隷にした生徒はみんな不登校になったのもな!優希はその一人なんだよ!」
「はぁ…確かに私は数々の生徒を奴隷として使ったわ。けど、私はただ奴隷として使っただけ。不登校になったのは勝手でしょ?」
(ったくわがままな奴だ…ほんとに三年か?)
「さっきから聞いてりゃ、調子の良い事ばかり言いやがって…」
「え、尚どうして?」
「な、何よ?次から次へと…」
「俺は聞いてた。優希に『一カ月だけ奴隷として働きなさい。』って言ってたのをな。」
「う…」
「は…一カ月?でも、確か優希は三カ月ぐらい…」
「こいつの都合だよ全て。一カ月って言っといて、一カ月経ったら『言ってないわよ。何勝手に奴隷終わろうとしてるのよ。』と言って、永遠に奴隷として使おうとしてたんだよ。つまり、こいつの一生奴隷として扱われる訳だ。」
「そうだったのか。だから優希は不登校に…」
「こんな野郎にこき使われたのか優希は…可哀想な奴だ。そのせいで、優希は彼女と別れる羽目になったし…こいつが優希の彼女に優希の悪口言って別れさせたんだ…最低な野郎なんだよ。」
「なんて野郎だ…ふざけすぎてる…」
「優希…あいつ…」
「これでもまだ優希を奴隷として使う気か?」
「くそ…悪かったわね。あいつはもういいわ。もうばれちゃしょうがないわね…」
「……………」
「何よ?これでいいんでしょ?」
半ば半ギレの由紀は渋々認めた。だが、本心は違う。それに気付いた尚はぐっと由紀に近づいた。
「な…何するのよ!?」
「おい、優希に謝れ!それと優希の彼女にもな!」
尚は由紀の胸ぐらを掴んだ。尚は今にも由紀を殴りそうだった。慌てた悠太が尚を必死に止めた。
「尚、それだけは止せ。お前の気持ちは充分わかる…けど、それ以上は許される事じゃない。」
「だって、許せねえんだよ。自分勝手な野郎に優希は…優希は…」
尚は泣いていたのだ。それは悠太も同じだった。親友がこんな奴に奴隷として使われていたなんて思うと寒気もしたし、同時に腹立たしさも感じた。そのやりとりを見てようやく由紀は謝罪した。
「…すいませんでした。」
「誰に謝ってんだよ!」
「え…」
「俺たちじゃなくて、優希に謝れまずは!」
「はい…」
尚に怒鳴られ由紀は素直に応じた。その後由紀は優希に謝ろうとした。が、優希は拒否…そして今に至るのだった。