美しい桜と音-1学期編- - 第1章
疑われた優希
優希は何時も学校の登下校は一人だ。別に友達がいない訳ではなく、登下校の時は一人でいたいと思っていた。たまに一緒に登下校する時もある。周りを見れば、友達とワイワイガヤガヤしながら登校しているが、優希は決して羨ましいとは思わなかった。今日も何時も通りの時間に学校に到着すると…

「おっす優希!」
「おっ、悠太か。相変わらず元気だけは良いな。」

優希の幼馴染の悠太だ。

「ちょっと優希、『だけ』は余分だろ?」
「そうか?俺は正しいと思うけど?」
「他にもあるだろ?」
「う〜ん…全然思いつかん。」
「なんてこった。まあいい…とにかく教室行こうぜ?」

優希と悠太は教室に入った。そこそこ居たが、未だ来てない人はいる。

「なぁ優希。」
「何だよ?ちょっと寝かせてくれ…」
「おやおや、お前にしては珍しくお疲れだね…何かあったんか?」
「ああ、美音にな。」
「何でそんな言い方なんだよ?俺なんか一人っ子だからよ、お前ら兄妹羨ましいんだぞ?」
「そうは言うけどな、こっちはこっちでややこしいし、大変なんだぞ?」
「何だったら、俺が美音ちゃんを養子で欲しいわ。」
「お前は親か!お前なんかに美音はやらん!」
「へへ、優希はやっぱお兄ちゃんだな。」
「うるせー!全く調子乗りやがって…」

そんな話をしていると、始業の時間に…

「みんなー、おはよう。」

優希達の担任の指原先生だ。

「あれ?先生、もしかして髪切りました?」
「あら、そうよ。悠太君気付くの早いわね。」
「だって、全然イメージ違いますよ。」
「あらまぁ…でも、そう言って私の評価上げて貰おうと思ってるんじゃない?」
「え…いや…そんな訳じゃ…」
「うふふ、図星みたいね。」
「くそ〜…」

悠太は凄く悔しがった。周りは大爆笑。優希は悠太を見て思った。

「へ…彼奴らしいな。」
(しかし…悠太の言う通り、あんか髪型だとほんとイメージ変わるな。)
「えーと…お話はそれくらいにして、今日も特に連絡する様な事は無いけど、優希君。」
「え…あ、はい。」
「後で職員室来てくれる?」
「え…何で俺?」
「じゃあ、皆んな勉強頑張ってね。」

先生は教室を出た。悠太はニヤニヤしながら優希の元へやって来た。

「へへ、お前がお呼び出しとは珍しいな。」
「俺何も悪い事してないけどなぁ…」
「この学校は恋愛禁止だからな。」

優希達が通う学校は、他の学校と違い、校則に『恋愛禁止』というのがある。これは学校内に限らず、学校外でも禁止なのだ。もし破る、或いはバレてしまったら厳しい罰則が下される。

「優希、ほんとにしてないのか?」
「当たり前だろ?する訳無いじゃん。」
「ま、とにかく職員室行きゃ、答えが分かるしな。」
「はぁ…行ってくるわ。」

優希は頭をかきながら職員室に向かった。

コンコン

「失礼します…」
「優希君こっちよ。」
「あのぉ先生…話って何ですか?」
「優希君、ここの学校の校則は知ってるわよね?」
「恋愛禁止なのは知ってますよ。え…ちょっと待って下さい、まさか俺がそんな事…」
「残念だけど優希君、これを見なさい。」
「え…嘘…」

其処には明らかに優希が写っていた。それも見知らぬ女子と手を繋いでいる写真だった。

「これが徹底的証拠。これでもしてないって言う?」
「え…いや…これはその…偶々人が多くて、逸れない様に最終手段として、手を繋いでただけで…別に付き合ってる訳では無いんです。先生…信じて下さい、お願いします…」

優希は頭を下げた。まさか写真も撮られ自分が写ってるなんて思いもしなかった。しかし、嘘はついていない…事実なのだ。

「ほんとに優希君、付き合ってる訳では無いのね?」
「勿論です。」
「わかった。でも、疑わしい事をしてしまったのはわかるわよね?」
「それは…そうですけど…」
「見過ごしたいとこだけど、そういう訳にはいかないから、優希君には申し訳ないけど…放課後居残りね。わかった?」
「え…居残り?そんな…」

優希は事実を述べたにも関わらず、放課後居残る事になった。

(マジかよ…これじゃ美音との約束が…すまん、美音申し訳ない。)

夜明け前 ( 2019/03/10(日) 13:08 )