第7章
第157話

中に入ると、ステージでは漫才の最中だった。
空いている席に座りステージを眺める。

七瀬「あ、今漫才してるのって確か・・・」
蒼「ん?・・・あ、やまととゆうただ。」
七瀬「そうや思い出した。あの2人漫才とかするんやなあ。」
蒼「やまとは目立ちたがり屋だからなー。ゆうたはお笑い好きだし。」
七瀬「そうなんや。蒼も何か出たら良かったのに。」
蒼「俺そんなキャラじゃないでしょ?」
七瀬「そう?委員長もしてるしみんなからも人気やし、結構出そうなタイプやと思ったんやけどなぁ。」
蒼「そうかなぁ。」
七瀬「そうやで。」
蒼「まあ、見てる方が楽しいかなと思ってさ。それに今年は受験もあるから、あんま練習とかに時間割けないなと思ってさ。」
七瀬「そっか、それもそやね。」
蒼「七瀬こそ何か出れば良かったのに、って七瀬も目立つの苦手か。」
七瀬「うん、苦手や。」
蒼「お互い様だな。」

そう言って笑っているうちに漫才が終わった。

その後ステージでは弾き語りやダンスなどが流れるように披露され、いよいよ予選最後の出場者になる。

蒼「もう最後か〜、じゃあこれ観終わったら教室戻ろっか。」
七瀬「うん!あ、いくちゃんや!!」

七瀬が指差すステージを見ると、そこには制服姿の生田が立っていた。

蒼「ほんとだ。歌うって言ってたけど、何歌うんだろ。」
七瀬「ん〜、ミュージカル好きって言ってたし、そう言う系の歌じゃないかな?」
蒼「なるほど、ありえるな。」

そんな話をしていると生田がマイクを手にするのが見える。

少しの静寂。何を歌うのか、客席のみんなが生田を見守る。

次の瞬間、音楽が始まる。
が、それはまさかの音楽だった。

〜〜〜〜♪

生田「ヌプラサ ポールサ ポルカン タスティ ヤラカニ ポッピィー クックッティ イエバン アイリセ ティットサ・・・」

蒼「な、何これ・・・」
七瀬「わ、分からん・・・」
観客『(・・・・・・)』

蒼たち同様、ほかの観客も聞いたことのない音楽と言語にざわついている。

が、堂々歌う生田の姿に、いつのまにか客席の全員がステージに釘付けになっていた。

蒼「やっぱうまいなぁ、生田は。」
七瀬「ほんまに、なんの曲かわからんけど聴き入ってしまうもん。」
蒼「ほんとに。でも、すごい楽しそうだな。」
七瀬「うんっ。」

その後少しして曲が終わり、次の曲に入る。

2曲目は、先ほどとは打って変わって激しい某ロックバンドの曲だった。

蒼「これまた、すごいな・・・。」
観客『〜〜〜〜〜〜ッ!!!』

観客席も大きな盛り上がりを見せる。

数分後、無事2曲目を終えた生田は深呼吸をしながら息を整えている。

生田「ふーーっ・・・。えー、本日は私、生田絵梨花のソロコンサートに来ていただきありがとうございます!」

観客『いえーーーい!」

観客はすっかり生田の虜らしい。

生田「ふふっ、ありがとうございます。先程聴いていただいたのは・・・」

曲の説明をする生田。どうやら1曲目に歌ったのはフィンランド民謡らしい。分かるわけない。

生田「・・・と言うことで!えー、じゃああまり時間もないので、最後に1曲だけ!せっかくなので誰かステージで一緒に歌ってくれる人いますかーー???」

観客A「はーーいはいはい!俺!」
観客B「バカっお前めっちゃ音痴じゃん!」
観客A「お、音痴じゃねえわ!」

そのやりとりに盛り上がる客席。その後もいろいろな男子生徒が手をあげまくる。おそらく歌いたいというよりは生田とステージに立ちたいだけだろう。

七瀬「いくちゃんすごい人気やな笑」
蒼「だな笑 誰選ぶんだろ・・・」

生田「ん〜、それじゃあ・・・」

客席を見渡す生田。と、その時。
生田の視線が蒼たちの方を見て止まる。

生田「・・・♪」
七瀬「蒼、いくちゃんこっち見てない??」
蒼「いやまさか・・・でもそんな気もする・・・。」

そして。

生田「えー決まりました!じゃあ、そこの執事の服を着た男の子と、隣の女の子!こっちに来てくださーい!!」

2人「「え・・・まじ??」」


Haru ( 2022/03/21(月) 17:35 )