第7章
第153話

お腹を満たした蒼と飛鳥。
2人は今、アイスを食べながら他の展示を回っている。

飛鳥「あ、ここじゃない?梅が言ってたとこ。」

見てみるとそこには縁日と書かれた看板や、赤と白の提灯が列になって吊るされていた。

蒼「ぽいね、行ってみるか。」

中に入る2人。
教室内の壁は壁紙や段ボールで装飾されており、思っていたよりも本格的に再現されていた。

蒼「結構凝ってるな〜。」
飛鳥「へ〜、すご〜い。」

そんな話をしていると。

山下「おーいお二人さーん。」
蒼「ん?あぁ、美月。」
山下「なんか反応薄いですね。あ、久保もそこに居ますよ?」

山下に指差された方を見ると久保も気づいたのか頭を下げる。

山下「あ、そういえば蓮加たちならちょっと前に先輩方の出店の方に行きましたよ?」
蒼「知ってるよ、会ったから。」
山下「あれ、そうなんですか?じゃあ何しにここへ?」
蒼「何って、遊びに来たんだよ。学園祭って一応全部回るもんでしょ?」
山下「うーん、そうなんですかね?でも来てくれて嬉しいです。」

そう言って微笑む山下。

蒼「あと、梅に会いに行ってあげてって言われたから。」
山下「なるほど・・・それは梅に感謝しないとですね。」
蒼「だね。あ、射的あるじゃん。やって良い?」
山下「あ、良いですよ。飛鳥さんもどうぞ。」

山下から銃と弾を受け取る。先に飛鳥が挑戦することになった。

山下「よく狙ってくださいね〜。」
飛鳥「ヤマ、静かに。今集中してるから。」
山下「はーい。」

狙いを定める飛鳥。が、惜しくも外れる。

飛鳥「あー惜しい!もう1回!」

その後、残りの4回挑戦するも、全て外してしまった飛鳥。

飛鳥「あ〜ダメだ〜。ねぇヤマ、これちょっと難しくした?」
山下「してないですよ〜。飛鳥さんが下手なんじゃないですか?」
飛鳥「・・・ぶっ飛ばすよ?」
山下「冗談ですよ!怖いな〜もう・・・じゃあ次は蒼先輩ですね、はいどうぞ。」
蒼「ありがと。」

銃に弾を入れ、構える蒼。
指を弾くと弾が発射され、お菓子に直撃する。

残りの4つも全て的中させ、無事お菓子3つと小さなぬいぐるみを2つゲットした蒼。

山下「まさか全部当てるとは。先輩はなんでもできるんですね。」
蒼「まぁ、射的は昔から得意だから。」
飛鳥「ふん、どうせ私は下手ですよーだ。」
蒼「射的外したくらいで拗ねるな。ほら、これやるから。」
飛鳥「べ、別に欲しいとは言ってないし!まあ、蒼が? どうしてもあげたいって言うなら貰ってあげても良いけど?」
蒼「相変わらず素直じゃないな。ほら。」
飛鳥「・・・ありがと。」
蒼「おう。」
山下「・・・なーんかお二人ともイチャイチャしてません?私妬いちゃいますよ?」
蒼「してません。飛鳥、ニヤけてないで次あれやろ。」
飛鳥「に、ニヤけてないし!まぁやるけど。」

その後ヨーヨーすくいや輪投げに挑戦した飛鳥。

飛鳥「あー、終わっちゃった。」
蒼「だな。でも、結構楽しかったよ。」
久保「そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます!」
蒼「こちらこそ。そういえば、2人も明日来るんだっけ?」
山下「そうですよー、先輩のコスプレ姿拝みに行きますね?」
蒼「言っとくけど特別なことはしないからな。」
山下「ちぇ、先輩のケチ。まあ良いです、楽しみにしておきますね?」
蒼「あぁ。よし、じゃあ2人ともまた。」
久保「はーい、ありがとうございました〜!」

その後飛鳥と一通り回った蒼。時計を確認すると、約束の時間まで5分を切っていた。

蒼「あれ、もうこんな時間か。悪い飛鳥、俺実は2時から用事ある。」
飛鳥「誰と?」
蒼「さくらたちと。さっき来た時回ろうって言われて。」
飛鳥「あー、そういえばなんか言われてたね。行ってらっしゃい。」
蒼「あれ、やけにあっさり・・・いつもみたいに拗ねると思ったのに。」
飛鳥「拗ねて欲しいの?」
蒼「いや、そういう訳じゃないけど、なんか想像してた反応と違ったから。」
飛鳥「別に、まぁえんぴーたちなら良いかなって。それに、今日はもう満足したから。明日もあるし。」
蒼「ん?明日も回るの?」
飛鳥「回んないの?」
蒼「明日2人とも忙しいしなぁ。それに、七瀬との約束もあるから・・・明日は厳しいかも。」
飛鳥「・・・ふーん。じゃあしーさんたちと回ろーっと。」
蒼「ごめんな。でも、今日一緒に回れて楽しかったわ。」
飛鳥「・・・それ、ほんと?」
蒼「ほんと。」
飛鳥「ふーん・・・そっか、楽しかったのか・・・そっかそっか。」

うなじのあたりをさすりながらニヤける飛鳥。
この癖が出るということは、おそらく楽しかったと言われたのがよほど嬉しかったのだろう。

蒼「顔ニヤけてるぞ飛鳥。」
飛鳥「う、うるさいな。別にニヤけてないから。」
蒼「それなら良いけど。じゃあ、俺行ってくるから。また後でな。」
飛鳥「うん、じゃあね。」

こうして飛鳥と別れた蒼は、さくらたちの待つ教室へと向かったのだった。







Haru ( 2021/12/29(水) 18:29 )