第6章
第136話

蒼「ん・・・。」

ふと目が覚めた蒼。
スマホで時間を確認する。時刻は1時過ぎ。蒼が寝落ちしてからまだ4時間しか経っていなかった。

蒼「まだ1時か。にしても暑いな・・・」

少し考えた後、ベットから起き上がる蒼。
そのまま荷物を抱えとある場所へ向かう。

数分後、蒼が到着したのは温泉だった。
宿の方を見る。部屋の電気が全て消えているのを見ると、おそらくみんな寝静まっているのだろう。

蒼「深川先生、ごめんなさい。」

そう呟いた蒼は脱衣所で服を脱ぎ、そっと大浴場のドアを開ける。

蒼「これは凄いな・・・。」

目の前に広がる大浴場。サウナだけでなく、露天風呂もあるのが確認できる。
蒼は苦戦しながらも髪と身体を一通り洗った後、ゆっくりと湯船に浸かる。

蒼「ふぅ〜・・・あ〜、生き返る・・・」

蒼が一息ついたその時。

「・・・もしかして、蒼先輩ですか?」

壁の向こうから聞き覚えのある声で呼ばれる蒼。

蒼「・・・もしかして、梅?」
梅澤「そうです、梅です。隣に久保もいますよ〜。」
久保「ちょ、梅、言わなくていいって。」
梅澤「いいじゃん見えてないんだから〜。先輩、何でこんな時間にいるんですか?」
蒼「色々あってな。てか、2人こそ何でいるの、入ったんじゃないの?」
梅澤「そうなんですけど、なんか眠れなくて。で、久保も起きてたから外出て話してたら、そういえばさっきあまり温泉楽しめなかったねってなって。それでまた入りに来たって感じです。」
蒼「なるほどね。他のみんなは寝てるんでしょ?」
梅澤「ぐっすり寝てますよ〜。・・・あ、そうだ!」
蒼「?」

突然会話が止まる。
どうやら2人で何か話しているらしい。

久保「えっ!?そ、それはいくらなんでもダメだって!」
梅澤「うーん、大丈夫!多分バレないから!ほら、行こ?」
久保「本当かなあ・・・てか、恥ずかしいよ・・・。」
梅澤「私もいるから!ほら、行くよ!」
久保「う、うん・・・。」

2人が湯船から出る音がする。
もう温泉を出るのだろうか。そう思いつつも、蒼が自分の時間を楽しもうとしたその時。

ーガラガラッ。ー

大浴場の扉が開く音がする。
まさか蓮たちが来たのだろうか。そう思った蒼は扉の方に目を向ける。

蒼「・・・え?」

扉の前に立っていたのは蓮ではなく、先ほど壁越しに話していたはずの梅澤と久保だった。

梅澤「すみません先輩、来ちゃいました。」
蒼「いやいや、来ちゃいましたって、流石にやばいでしょ。ここ男湯だよ?」
梅澤「いいじゃないですか、先輩しかいないんですから。」
蒼「いや、そうかもしれないけどさ、流石にまずいって。久保もそう思うでしょ?」
久保「あ、ええと・・・」
梅澤「久保も意外とノリノリですよ?ね、久保?」
久保「・・・い、一緒に入っても良いですか?」
蒼「マジかよ。・・・はぁ、じゃあ入っても良いけど、タオル巻いといてよ。」
梅澤「やったね久保!じゃあ、おじゃましまーす!」
久保「お、おじゃまします・・・。」

そう言って蒼と同じ湯に浸かる2人。

蒼は2人から少し距離を置くように移動する。

梅澤「ふぅ〜、やっぱ気持ち良いですね〜温泉は!先輩もそう思いません?」
蒼「そうだな。」
梅澤「あれ、元気ないですね、もしかして怒ってます?」
蒼「いや、怒ってないけどさ、その、こういうの平気なんだなと思ってさ。」
梅澤「平気じゃないですよ?今結構恥ずかしいですし。でも、せっかく先輩いるなら一緒に入ろうと思って。ね、久保?」
久保「う、うん・・・。」
蒼「そう・・・でも2人のために言うけど、あんまこういうことはしないほうがいいよ。誤解されるとこまるでしょ?」
梅澤「うーん、確かにそれもそうですね。じゃあ、今度から気をつけますね。ところで、そっち行っても良いですか?」
蒼「いや、ダメでしょ。話聞いてた?」
梅澤「聞いてました!でも、今度からって言ったので、今日は大丈夫ですよね?」

そう言って蒼の目を見つめる梅澤。その隣で久保も蒼を見つめている。

蒼「・・・いつものしっかり者の2人はどこ行ったんだか。まあいいや、言っとくけど、近づきすぎるのは禁止だからな。」
梅澤「やった、ほら久保行こ。」

そう言って蒼に近づく2人。それぞれ蒼の両隣に座る。

蒼「・・・言ってるそばから近いし。」

タオルを巻いているとは言え、女子の体がすぐ隣にあるという状況は、流石の蒼も動揺せずにはいられなかった。
誤解されないように上を向き、目を瞑る蒼。

梅澤「ふぅ〜、どうですか?女の子2人と温泉に入ってる気分は。」
蒼「どうって、別に普通。」
梅澤「素直じゃないですね、嬉しいくせに〜。」
蒼「からかうなら俺出るけど。」
梅澤「冗談ですって。そういえば、左手大丈夫なんですか?」
蒼「まぁ、捻っただけで折れてないからね。痛いのに変わりないけど。」
梅澤「確かに、食べさせてもらってましたもんね〜。相変わらずモテモテなようで。」
蒼「それ褒めてる?それともなんか怒ってる?」
梅澤「怒ってないですよ?でも、私も先輩に食べさせてあげたかったな〜って。先輩や一年生ばっかりずるいな〜とは思いました。」
蒼「俺が頼んだんじゃないからね?」
梅澤「でも悪い気はしなかったですよね?」
蒼「まあね。・・・てか、俺さっきから梅とばっか話してるけど、久保は?生きてる?」
梅澤「隣見ればわかりますよ?」

蒼が目を開け隣を見ると、そこには林檎のように頬を赤く染めて固まっている久保の姿があった。



■筆者メッセージ
昨日も投稿忘れてました申し訳ないです。

Haru ( 2021/12/09(木) 14:19 )