第5章
第94話

校舎を出た2人。
飛鳥は今、蒼の隣で鼻歌を唄いながら歩いている。

蒼「随分ご機嫌だな。やっぱ一緒に帰るの嬉しかったんだr・・・痛って!」
飛鳥「しつこい。」
蒼「だからって蹴るなよ・・・。」
飛鳥「今のは蒼が悪いじゃん。そもそも嬉しかったとしても私が言うわけないでしょ。」
蒼「そうですね。」

蒼は足をさすりながら飛鳥について行く。ふと飛鳥が歩みを止める。視線の先を見ると、道を挟んだ向こう側に最近できたと噂のクレープ屋があった。

飛鳥「ねぇ、クレープ食べたい。」
蒼「えぇ、今?」
飛鳥「今!飛鳥ちゃんは頭使って疲れたの!ほら行くよ!」
蒼「はぁ・・・分かったよ。」

渋々飛鳥について行きクレープ屋のメニューボードを見る蒼。

「いらっしゃいませ〜・・・ってあー!橘先輩じゃないですか〜!」
蒼「ん?」

蒼が顔を上げるとそこには矢久保がクレープ屋の制服を着て立っていた。

蒼「あれ、矢久保さん。ここで働いてたんだ。」
矢久保「もぅ、そこはみっちゃんって呼んでくれないとダメですよ先輩〜!私だけじゃなくて柚菜ちゃんもここで働いてるんですよ!今日は居ないですけど!」
蒼「そっか、2人は仲良しなんだね。」
矢久保「かっきーには負けますけど!あ、注文何にしますか?」
蒼「飛鳥決まった?」
飛鳥「んー・・・ストロベリーデラックスショートください。」
蒼「なんか凄そうな名前・・・。じゃあ俺は、チョコバナナにしようかな。」
矢久保「かしこまりました!少々お待ちください!」

注文を通し待つこと数分。
奥から両手にクレープを持った矢久保が出てくる。
矢久保「お待たせしました!2つ合わせて千円になります!」
蒼「千円ね、はい、ちょうど。」
矢久保「ありがとうございます!」
飛鳥「いいの?私が言い出したのに。」
蒼「良いよ、補習頑張ったからな。」
飛鳥「・・・ありがと。」
矢久保「お二人ともラブラブですね!また来てくださいね!」

矢久保に別れを告げ近くの公園のベンチに座る2人。
飛鳥は美味しそうにクレープを頬張っている。

蒼「飛鳥、クリームついてる。」
飛鳥「どこ?」
蒼「鼻の頭んとこ。」
飛鳥「・・・ほんとだ。」

鼻先のクリームを掬って舐める飛鳥。食べたいのか蒼のクレープをじっと見つめる。

蒼「・・・ほら。」
飛鳥「へへっ、ありがと。」

蒼のクレープを一口食べる飛鳥。さっきまでの機嫌が嘘のように笑顔になっている。

その後あっという間に食べ終えた2人は再び家路へと歩く。

蒼「そういえば飛鳥、さくらちゃんに伝えた?コテージのこと。」
飛鳥「あ、伝えたよ。めっちゃ集まったって言ってた。」
蒼「・・・ちなみに何人くらいかわかる?」
飛鳥「確か、16人って言ってたような・・・。」
蒼「16!?」

あまりの多さに驚く蒼。

蒼「蓮加たちも12人いるって言ってたし・・・大丈夫かな・・・。」
飛鳥「大丈夫って、バスのこと?」
蒼「いや、バスは生田のおじいちゃんが40人乗りくらいの用意してくれるらしいから良いんだけどさ。高校生だけでこんな大人数でしかも県外って良いのかなって。」
飛鳥「あー、確かに。ほぼ合宿だもんね。」
蒼「ほんとに。さすがに誰か大人が必要だな・・・どうしよ。」

しばらく考える2人。すると飛鳥が何かを閃く。

飛鳥「じゃあ深川先生は?怪我しても応急処置してくれるし、生徒と仲良いし!」
蒼「なるほど。でも1人じゃ到底しんどいだろうから、深川先生と仲良い新内先生にも声かけてみる?」
飛鳥「そうだね。・・・あ、あと奈々未がいる!まいやんたちいるって言ったらくると思うよ!」
蒼「どうだろう、病院勤務だからなあ、忙しいかも。一応聞いてみるけど。」
飛鳥「ふふっ、あ〜、楽しみだなあ!」
蒼「それまでに勉強しとこうな。」
飛鳥「うっ・・・急にお腹痛くなってきた・・・。」

こうして数分後家に到着した2人。

蒼たちの高校生活最後の夏休みが幕を開けようとしていた。


Haru ( 2021/10/28(木) 12:54 )