第5章
第93話

さくらと一緒に帰った4日後。
乃木坂高校では終業式が行われた。

もはや恒例となっている校長先生の長い話をなんとか耐え抜き、教室に戻ってきた蒼たち。

蓮「あ〜、やっと終わった〜。毎度毎度、あの校長先生話長いんだよな〜。」
七瀬「蓮君寝てるだけなんやから長くても関係ないやん。」
蓮「七瀬さん相変わらず俺に厳しくない?どう思う蒼。」
蒼「・・・ノーコメントで。」

話をしていると設楽先生が入ってくる。

設楽「はい、お前ら席に着けー。全員揃ってるか?揃ってるな、よし。えー・・・なんだっけ。あ、そうそう。明日から夏休みだが、君たちは受験生なので、基本的には補講があります。・・・とまぁ例年通りならこうなるんですが」
「「え?」」

一瞬クラスがざわつく。
それを静止するかのように設楽先生が話す。

設楽「えー、今年は自主性を重んじるということで、補講はなしとします。」
「「おおーーー!!」」

湧き上がる拍手。

設楽「ただし!学校は毎日開放しておくので、来る人は来てもらって構いません。まぁ受験生だから、俺は当然毎日来るだろうとは思ってるけどね?」
「「えぇーー・・・。」」

上げて落とすとはまさにこういう事を言うのだろう。

設楽「まあその辺は君たちももう子供じゃないし分かると思うので、俺からは以上とさせていただきます。はい、ということで1学期お疲れ様。また9月に元気な顔を見せてください。号令!」

挨拶をしホームルームを終えた蒼たち。

蓮「結局毎日来なきゃ行けない雰囲気だなこれは・・・。あーあ、せっかくの夏休みが〜。」
蒼「俺は元々予定ある日以外は毎日来るつもりだったから支障はないかな。」
翔「俺も。」
白石「私も。」
松村「まぁ、当然やな。」
蓮「なんだよみんなして真面目ぶっちゃってさー。へっ、いいよいいよ、来ればいいんでしょ来れば!大人しく勉強しますよ。」

そう言いながら荷物を準備する蓮。

蓮「まぁ、今日は予定あるから帰るけど。んじゃ、お先〜!」

そう言い残し蓮は教室を飛び出す。

白石「じゃあ、私も帰ろっかなー。飛鳥は今日が最後の補習だっけ?」
飛鳥「そうだよ。しかも小テストあるし、最悪。」
白石「じゃあ、頑張ってね?ほらまっちゅん帰るよ!」
松村「あ、待ってやまいやん〜!んじゃみんな、また月曜日な〜!」
翔「俺も帰るわ。じゃあな〜。」
七瀬「ななも今日行くとこあるから帰るね。蒼はどうするん?」
蒼「あー、俺ちょっと勉強して帰るから残る。」
七瀬「そっか、じゃあ、また月曜日やな。飛鳥も、バイバイ。」
飛鳥「またね〜。」

みんなを見送り教室に取り残される2人。

飛鳥「で、なんで残ったの?普段学校で勉強あんましないのに。」
蒼「まぁ、気分かな。それに、5日間補習頑張った幼馴染と一緒に帰ってあげようと思ってさ。」
飛鳥「ほんとに!?」
蒼「今日頑張ったら、だけどな。」
飛鳥「わ、わかった、すぐ終わらせてくる!絶対待っててよね!」
蒼「はいはい。」

そう言って補習へ向かう飛鳥。

蒼も勉強を始めようと参考書を開く。
その時、窓の外から蒼の名前を呼ぶ声がする。

「蒼せんぱーーい!いますかーーー!!」
「ちょ、沙耶香。声大きいって。」
「み、みんなこっち見てるよ〜。」
「2人も呼んで!せんぱーい!」

蒼が窓の外を覗くと掛橋がこちらに気づき手を振る。隣には賀喜とさくらもいた。

掛橋「あ、ほらやっぱりいた!おーいせんぱーい!」
蒼「掛橋、うるさい。・・・で、何?」
掛橋「先輩まだ帰らないんですかー?」
蒼「まだ帰んないよ。今勉強中だし。」
掛橋「えぇ〜。じゃあそっち行ってもいいですか?」
蒼「・・・邪魔しないならな。」
掛橋「やったー!かっきー、さくちゃん、行こ!」
賀喜「え、あ、ちょっと沙耶香!?」
さくら「あ〜、2人とも待ってよ〜!」

数分後、3人が教室に入ってくる。

掛橋「蒼先輩、お待たせしました!」
蒼「待ってないけどな。で、何しに来た。」
掛橋「何って・・・お話?」
蒼「帰れ。」
掛橋「酷い!せっかく来たのに!」
蒼「はぁ・・・ちょっとだけだからな。」
掛橋「はい!2人もほら、こっち!」
賀喜「お邪魔します・・・。」
蒼「いや、家じゃないんだから。」
さくら「先輩この前はありがとうございました。体調大丈夫ですか?」
蒼「帰ってすぐお風呂入ったからね、全然平気だったよ。」
賀喜「この前って?」
さくら「実は月曜日、蒼先輩と一緒に帰ったんだ〜。」
掛橋「え、なんでなんで!」
さくら「私が傘忘れて困ってたらたまたま蒼先輩が通りかかって、傘に入れてくれるって言ってくれて。そのまま送ってもらっちゃった。」

照れながら話すさくら。賀喜と掛橋は羨ましそうにしている。

掛橋「いいな〜、沙耶香も先輩と帰りたいなぁ〜。あ、そうだ!今日一緒に帰りましょうよ!」
蒼「今日は先約があるから。また今度な。」
掛橋「え〜・・・残念。」
賀喜「仕方ないよ沙耶香、今日は諦めよう。」
蒼「そういえばかっきーテストどうだったの?」
賀喜「あ、えっと・・6位でした・・・。」

明らかに落ち込んでいる賀喜。

掛橋「え、なんで落ち込むの?沙耶香なんて20位だよ?」
さくら「私も18位・・・。」
蒼「掛橋はもっと落ち込むべきだけどな。でもそっか、6位か。」
賀喜「はい・・・。」
蒼「・・・しょうがないなぁ。じゃあ、今回だけ特別に聞いてあげるよ。」

ハッと顔を上げる賀喜。

賀喜「・・・いいんですか?」
蒼「まぁ、頑張ったのは伝わったから。」
賀喜「やった、ありがとうございます!」
蒼「いいえ。」
さくら「ねぇ、さっきからなんの話ししてるの〜?」
掛橋「そうだよ!先輩、沙耶香にも教えてください!」
蒼「ダメ。これは俺とかっきーの秘密だから、ね?」
賀喜「はい!」
掛橋「もぅ、先輩のバーカ!知らない!」

拗ねる掛橋。
蒼「じゃあ、これで許して。」

そう言って蒼は掛橋の頭を撫でる。
掛橋「そ、そんなんじゃ許しません・・・。もっと撫でてください!」
蒼「はいはい。」

さっきまで拗ねていたのが嘘のようにニヤけている掛橋。

さくら「先輩、私もその・・・撫でてほしいです・・・。」
賀喜「私も・・・。」

頭も撫でると2人は照れ臭そうに笑った。

その後3人が帰って行ったので蒼は勉強に戻る。
それから1時間後、飛鳥が無事補習を終えて戻ってきた。

飛鳥「お待たせ、はぁ、はぁ・・・。」
蒼「なんでそんな息切れてんの?もしかしてそんなに一緒に帰りたかった?」
飛鳥「う、うるさいな、違うから!ほら、帰るよ!」
蒼「はいはい。」

こうして蒼は1週間ぶりに飛鳥と一緒に校舎を後にするのだった。


Haru ( 2021/10/27(水) 21:25 )