第5章
第111話

3組に分かれた蒼たち。
現在、蒼と七瀬は生田の屋台巡りに付き合わされていた。

生田「蒼君、次ハンバーグ買いに行こ!」
蒼「生田、もう俺手空いてないんだけど?」
七瀬「あ、じゃあななが持つわ。」
生田「ごめんなぁちゃん、ありがとう!」
蒼「てか、こんなに買って食べ切れるのか?さっきも食べてたじゃん。」
生田「大丈夫!余ったら蒼君にあげるから!」
蒼「全然大丈夫じゃねぇ・・・。」

そうこう話しながら屋台を歩いていると、

「あ、先輩みつけた!」

後ろから声をかけられる。
蒼が振り向くとそこには掛橋たちがいた。

蒼「掛橋、それにさくらとかっきーもいる。3人で来たの?」
さくら「いえ、10人くらいです。でも多すぎると動きにくいので分かれて動いてます。」
蒼「なるほど、俺らと同じだね。」
掛橋「それより先輩!今さくちゃんのことさくらって呼び捨てにしてましたよね!いつからそんな仲になったんですか!?」
蒼「え、呼んでた?ごめん気づかなかった。」
掛橋「無意識で呼んじゃうほど親密な仲に・・・!?私のこともちゃんと沙耶香って呼んでください!」
蒼「・・・気が向いたらな。」
掛橋「絶対呼んでくれないやつだ!先輩のバーカ!」

拗ねる掛橋。蒼はそっと掛橋に近づき、顔を見つめる。

掛橋「な、なんですか!私の顔に何かついてますか!」
蒼「いや、浴衣姿可愛いなと思って。似合ってるじゃん、水色。」
掛橋「・・・。そ、そんなこと言っても、許してあげません。・・・へ、へへ。」
賀喜「沙耶香、感情が顔に全部出てるよ・・・。」
さくら「蒼先輩、私は・・・どうですか?」
蒼「もちろん、さくらも似合ってるよ。さくらだから桜色にしたの?」
さくら「はい、おばあちゃんが選んでくれて。」
蒼「可愛いよ。それに、かっきーもすごい似合ってる。髪も今日は結んでるんだね。」
賀喜「はい、気分変えたくて!」
蒼「良いじゃん、その髪型好きだよ俺。」
賀喜「あ、ありがとうございます!やった!」

喜ぶ後輩3人。その横で何故か生田と七瀬に睨まれる蒼。

蒼「え、俺何かした?」
七瀬「別にー。蒼後輩やといっぱい褒めるんやなーと思っただけ。」
生田「ほんと、私たちのことなんてぜーんぜん褒めてくれないのに、ねー、なぁちゃん。」
蒼「2人のことも褒めたじゃん・・・。」
賀喜「そう言えば、蒼さんいっぱい持ってますけど、そんなにたくさん食べられるんですか?」
蒼「ん?あぁ、これ実は生t・・・んっ!?」

何故か生田に口を抑えられる蒼。

生田「あー!そうそう!蒼君結構食べるんだー!これくらい余裕なんだって!」
さくら「へぇー、先輩すごいですね!」
賀喜「でも、何で口押さえてるんだろう・・・。」

生田に連行される蒼。

蒼「・・・ちょ、生田、息できないって。」
生田「ちょっと、後輩の前なんだから私のだって言わないでよね!」
蒼「え、別に良いでしょいっぱい食べるの良いことじゃん。」
生田「良くないよ!後輩にやばい人だって思われたくないもん!」
蒼「思わないって、大食いなんだなってなるだけだよ。」
生田「それが嫌なの!とにかく、蒼君のってことにしといてね!わかった!?」
蒼「・・・みんなで食べることにしよ。」

その後少し話した後、後輩たちと分かれ屋台巡りを再開した蒼たち。
その途中も他の1年生や同級生に遭遇した。

気がつけば、もうあと5分ほどで花火が上がる時間が迫っていた。

蒼「あれ、もうこんな時間か。2人とも、そろそろ戻ろうか。」
生田「ん、ほっほまって!ほうふふはへほはふはは!(訳:ちょっと待って、もうすぐ食べ終わるから!)」
蒼「りょーかい。」
七瀬「え、蒼今の生ちゃんの何言うてるか分かったん?」
蒼「え、うん、分かったよ。」
七瀬「凄いな・・・。」
蒼「まあこの状況だからってのもあるけどな。」
七瀬「なるほど・・・。」
生田「(モグモグ・・・ゴクンッ。)よし、終わり!さー、戻るぞー!」

無事食べ終わり待ち合わせ場所に向かう3人。
しかし、思った以上に混雑していてなかなか前に進めない。

生田「うー、苦しい、食べすぎた・・・。」
蒼「もうちょっとだから、頑張れ。」
生田「うん・・・あっ!」
蒼「ん?どうした生田・・・って、あれ?」

後ろを振り返ると、生田と七瀬の姿がない。
おそらく人混みで逸れたのだろう。

蒼「マジかよ・・・ん?」

良く見ると少し後ろで人混みの中からこちらに伸ばす手が見える。蒼は急いでそこに向かい手を掴む。


「・・・あ、蒼。」
蒼「・・・七瀬。良かった、2人とも逸れたのかと思った。」
七瀬「2人とも?生ちゃんは?」
蒼「それが、気づいたらいなくて。多分七瀬と一緒で人混みに流されたっぽい。」
七瀬「そっか。生ちゃん、大丈夫かな?」
蒼「まぁ、場所は知ってるから何とかなるとは思う。とりあえず俺らも向かおうか。」
七瀬「うん・・・。あっ、待って蒼。」
蒼「どうした?」
七瀬「えっと、あの・・・!」

七瀬が何かを言おうとしたその瞬間、

ーパーンッー

と言う音と共に夜空に花火が打ち上げられた。







Haru ( 2021/11/09(火) 13:00 )