第5章
第109話

七瀬と一緒に帰った日の4日後。ついに夏祭りの日が来た。

自分の部屋で浴衣を着る蒼。

蒼「よし、こんなもんかな。」

髪をセットし、その他諸々の準備を終え1階へ降りると、リビングで蓮加とみなみが蒼同様浴衣の着付けをしていた。

蒼「母さん、2人どんな感じ?」
母「もうすぐ出来るわよ。それにしても蒼、あなた凄く似合ってるわ、流石お父さん譲りね!」
蓮加「本当だ!お兄ちゃんかっこいい!」
みなみ「蒼は何着ても似合うんだね!」
蒼「ありがとう。でも、2人も似合ってるよ。」
蓮加「へへっ、ありがとう!」
母「良いわね〜お祭りなんて。懐かしいな〜。」
蒼「今日ゆっくりできるんでしょ?何かお土産買ってこようか?」
母「私のことは気にしなくて良いのよ、みんなで楽しんできなさい。・・・よし、と。ほら、完成したわよ!」

着付けが終わった2人は鏡の前で回りながら嬉しそうにしている。

蒼「よし、じゃあ行こっか。飛鳥も待ってるだろうし。」
みなみ「そうだね。じゃあお母さん、行ってきます!」
母「はーい、気をつけてね!」
「「はーい!」」

3人で家を出ると、飛鳥もちょうど出てきたところだった。

蒼「あ、飛鳥もちょうど出てきた。」
飛鳥「お、おはよう。」
蒼「もう夕方だけどな。」
蓮加「飛鳥さん可愛い!黒似合ってる!」
みなみ「本当だ!飛鳥可愛い!」
飛鳥「あ、ありがとう。2人も似合ってる!」
蒼「え、俺は?」
飛鳥「あ、蒼は・・・まぁ、似合ってる・・・かも。」
蒼「かもって。俺は飛鳥の浴衣すげえ似合ってると思ったのにな〜。」
飛鳥「っ!!」

蒼がそう言うと飛鳥は恥ずかしそうに下を向く。

蓮加「あー、飛鳥さん真っ赤だー!」
みなみ「ほんとだ、飛鳥照れてる〜!」
飛鳥「う、うるさいな2人とも!ほら、さっさと行くよ!」

こうして4人で祭りの開催される場所へと向かう。
歩くこと15分、無事付近に到着する。が、まだみんなの姿は見当たらない。

蓮加とみなみは蒼たちとわかれ、自分たちの待ち合わせ場所へと移動する。

飛鳥「まだみんなは来てないね。ちょっと早かったかな。」
蒼「とか言ってると来るよ・・・ほら。」

蒼の指差す方向を見ると白石と松村が見えた。
白石たちも蒼たちに気づいたのか、小走りでやってくる。

白石「ごめん、お待たせ!着付けに手間取っちゃって!」
蒼「いいよ、まだ来たばっかりだし。それより、白石も松村も、浴衣凄い似合ってる。」
白石「へへ、ありがとう、嬉しい!2人も凄く似合ってる!」
松村「あおちゃんこの浴衣な、まいやんと選びに行ったねん!まいやんが白で、まちゅがりんご色!ほら、さゆりんごやから!」
蒼「あぁ、なるほど、そゆことか。良いじゃん、かわいいよ。」
松村「ふふっ!あー、みんな早く来んかな〜!」

話していると続々と揃い始め、残すところ七瀬だけとなった。

秋元「なぁちゃん遅いね。道混んでるのかな?」
生田「確かに、人増え始めたから・・・あ、来た!おーいなぁちゃーん!」

生田の視線の先を見るとキョロキョロと周りを見渡す七瀬を発見する。少ししてこちらに気づいた七瀬が小走りでやってくる。

七瀬「ごめんみんな、遅くなって・・・。」
白石「大丈夫、そんな待ってないから!それよりなぁちゃん、すごい可愛い!」
松村「ほんまや!水色すごい似合ってるで!」
七瀬「あ、ありがとう!みんなも、すごい似合ってる!」

それぞれの浴衣姿を褒め合う女性陣。
それをみて蓮が首を傾げる。

白石「ん?蓮君どうしたの?」
蓮「いや、なんかさ、みんなすげえ似合ってて可愛いんだけど、西野さんと齋藤さんだけ妙にしっくりくるっていうか、板についてるっていうか・・・」
翔「そう?みんな同じくらい似合ってると思うけどな・・・」

考える蓮。蒼はその理由に何となく気づいてはいたが決して口にはしなかった。

その時、何かを閃いた蓮。
蓮「あ、そうだ!浴衣が似合う女性の体型って胸が」
蒼「蓮、その辺でやめとけ。殺されるぞ。」
蓮「・・・嘘ですごめんなさい。」
白石「蓮君サイテー!もうみんな、蓮君ほっといて行こ!」
七瀬「そやな、行こか。」
飛鳥「そうだね。」

そう言って歩いて行く女性陣。

蓮「あ、ごめん冗談だって!本当ごめん!ほら蒼も翔も謝って!」
蒼「なんでだよ。まあいいや、良いから行くぞー。」

こうして男性陣も女性陣の後ろをついて行く。
少し歩くと屋台の並ぶ通路に到着した。

白石「わー、美味しそう!私たこやき食べたい!」
松村「まちゅも!まいやん行こ!」
秋元「あ、待って2人とも逸れちゃうから!ほら蒼君たちも来て!」

順番に屋台を巡り、それぞれが食べたいものを買っていく。

蒼「じゃあ、みんな1個ずつは買ったし、とりあえずどこか座って食べようか。あんま一気に買いすぎても困るし。」
秋元「そうだね、そうしよっか!」

みんなで座れる場所を探す。少しいったところに食事スペース用のテーブルがあったのでそこで食べることにした。

松村「いただきまーす!もぐもぐもぐ・・・んーおいひぃ〜!」
生田「ほんとだ、美味しいね!まっつんのたこ焼き一個ちょうだい!」
松村「ええで!いくちゃんの焼きそばも一口もらうな!」
生田「はいどうぞ!・・・ん〜、たこ焼きも美味しい〜!」

それぞれが食べながら会話を楽しむ。
蒼がふと隣の七瀬を見ると、美味しそうにたこ焼きを頬張っていた。

蒼「七瀬って美味しそうに食べるよな。」
七瀬「だって、ほんまに美味しいんやもん。蒼も一個食べる?」
蒼「いいの?」
七瀬「うん、ええよ。はい、あーん。」
蒼「あーん・・・ん、ほんとだ美味しい。じゃあ七瀬も、はい、あーん。」
七瀬「あーん・・・ふふっ、美味しい。」

平気な顔であーんをし合う2人。

飛鳥「・・・あ、蒼!私も食べたい!」
蒼「え?飛鳥焼きそば一緒じゃん。」
飛鳥「あ、蒼のやつの方が美味しそうだかや!ほら早く!あーん!」
蒼「ったく、仕方ないな、ほら、あーん。」
飛鳥「ん・・・。あれ、おんなじだ。おかしいな・・・。」
蒼「そりゃそうだろ、何言ってんだか。」

そう言って焼きそばを食べる蒼。その横で飛鳥は嬉しそうにニヤけていた。

白石「・・・何であれで気づかないのかな・・・蒼君ってちょっと鈍感すぎない?」
秋元「あれは重症だね・・・」
松村「でも、なんか面白いな!あおちゃん、まちゅにもあーんしてー!」
生田「私もー!」
秋元「ちょっと2人とも!?・・・じゃあまなったんも!」
白石「もう・・・えぇい、じゃあ私も!」
蒼「ちょ、いっぺんに来なくて良いから!ちょっと2人とも、見てないで助けろ!」

2人は蒼を無視しそのまま食べ続けるのであった。

Haru ( 2021/11/07(日) 16:24 )