第5章
第108話

蒼「ふあぁ〜・・・眠かった・・・」

勉強を終え、大きな欠伸をしながら学校から帰る蒼。
今日は飛鳥が用事で昼から帰ったため、一人で下校していた。

蒼「腰も痛かったし・・・昨日激しすぎたかな・・・。」
「なにが?」
蒼「え、何ってそりゃ・・・って七瀬!?いつからそこに?」
七瀬「いや、さっきやけど。正門出たら蒼おったから追いかけてきてん。」
蒼「あぁ、なるほど・・・。」
七瀬「で、何が激しかったん?」
蒼「え・・・あ、あぁ、ゲームだよゲーム!昨日家に与田ともう一人後輩が遊びに来ててさ、結構夜遅くまでやってたから寝不足で・・・。」
七瀬「なるほど、それで今日ずっと欠伸してたんやな。」
蒼「そ、そうなんだよ。」
七瀬「ふ〜ん。まぁ、あんま無理しすぎたらあかんで?」
蒼「あ、ありがと。」

何とか誤魔化せたようだ。蒼はせっかくなので七瀬と帰ることにした。

七瀬「そういえば飛鳥何で昼から帰ったん?」
蒼「あー、何か用事があるって。何があるのかは聞いてないけど。」
七瀬「そっか。でも、良かった。」
蒼「何が?」
七瀬「こうして蒼と歩くの久々やから。ほら、蒼最近ななのことほったらかしやん?」
蒼「そう?」
七瀬「そうやで?登下校はいつも飛鳥とやし、休みの日デートもしてくれんし・・・なな寂しかってんで?」
蒼「それは・・・ごめん。」
七瀬「・・・ふふっ、冗談。ななは蒼と話せるだけで幸せやから。あっでも、寂しかったのはほんま。」
蒼「そっか・・・。」
七瀬「うん・・・。」

2人の間に沈黙が流れる。

蒼「・・・そう言えば七瀬。」
七瀬「ん、なに?」
蒼「言いたくなかったら良いんだけど、その・・・病気、大丈夫なのか?悪化したりしてない?」
七瀬「あー・・・うん、全然平気!薬でちょっと頭痛い時あるけど、ほんまそれくらい。診察も毎週行ってるけど、大きい変化はないって先生も言ってたし!ななの身体、意外と頑丈やねん!」
蒼「そ、そっか・・・。でも、やっぱり手術は・・・受けないんだよな?」

蒼が七瀬の病気を知ってから既に3ヶ月以上が経過したが、七瀬はいっこうに手術をしようとしなかった。

七瀬「うん。だって、手術したらななの身体の中ほとんど何もなくなっちゃうし・・・それに、手術しても再発して数年後には死んじゃうかも知れんらしいし!」
蒼「それは・・・やってみなきゃわかんないでしょ・・・。」
七瀬「それに、ななは今、蒼やみんなと居れるのが1番幸せやねん!この1年このまま幸せに過ごせたら、もう何も思い残すことはない。やから、今を大切にしたい!」
蒼「七瀬・・・。」
七瀬「もう、なーに暗い顔してんのー!ほら、ななのこと幸せにしてくれるんやろー?」
蒼「・・・そうだな。俺が言ったんだもんな。」
七瀬「そうやで?だから、これからもななのことよろしくな、蒼!」
蒼「うん、任せて。」
七瀬「あー、言ったで?じゃあ、はい!」

そう言って蒼の前に立ち手を差し出す七瀬。

蒼「え、なに?」
七瀬「ほら、ななのこと幸せにしてくれるんやろ?じゃあ、はい!」
蒼「・・・はいはい。」

七瀬の手を握る蒼。2人はそのまま七瀬の家まで歩く。

10分後、七瀬の家に到着した2人。

七瀬「送ってくれてありがとう。久々に帰れて嬉しかった。また帰ってくれる?」
蒼「あぁ、もちろん。・・・じゃあ、またな。」
七瀬「・・・あ、蒼!」

蒼を呼び止める七瀬。

蒼「ん?どうした?」
七瀬「あ、えっと、その・・・」
蒼「?」
七瀬「な、夏祭り、楽しみやな!」
蒼「あー・・・そっか、もう4日後だもんな。確かに、楽しみかも。」
七瀬「蒼も、浴衣着ていくん?」
蒼「そのつもり。今年くらいしか着れないだろうし。」
七瀬「そっか・・・楽しみにしてる!」
蒼「俺も、七瀬の浴衣楽しみにしてる。」
七瀬「うん!あ、ごめん、こんなことで引き留めて!」
蒼「いいよ。じゃあ、またね七瀬。」
七瀬「うん・・・あっ、待って蒼、ゴミついてる。」
蒼「えっ嘘、どこについて・・・っ。」

その瞬間、七瀬の唇がそっと蒼の唇に触れる。
唇を離し顔を赤らめる七瀬。

七瀬「2、2回目貰い、なーんて!・・・じゃあ、またな蒼!」

ーガチャッ、バタンッー

七瀬は勢いよく玄関を開け中に入る。
その後七瀬のキスですっかり目が覚めた蒼は足早に自分の家へと帰っていくのだった。

Haru ( 2021/11/06(土) 13:03 )