第4章
第77話

突然のことに固まってしまう蒼。

蒼「あ、あの、賀喜さん?」

声をかけると賀喜は急いで体を離した。

賀喜「・・・はっ!すみません、私ったら急に!迷惑でしたよね!」
蒼「いや、迷惑ではないけど・・・ちょっとびっくりした。」
賀喜「そうですよね・・・ごめんなさい。」
蒼「謝ることないよ。気にしないで。」
賀喜「・・・。あの・・・。」
蒼「どうしたの?」
賀喜「先輩は、その・・・キス、とかしたこと・・・ありますか?」
蒼「え・・・?」
賀喜「その反応はやっぱりあるんだ・・・」
蒼「いやまぁ・・・」
賀喜「飛鳥先輩ですか?それとも他の人?」
蒼「それは・・・」
賀喜「あ、ごめんなさい。そういうこと聞きたいんじゃなくて・・・その・・・」

賀喜は下を向いてモジモジしている。

蒼「?」
賀喜「私とも・・・してもらえませんか?その・・・キスを・・・。」
蒼「え?」
賀喜「私実はまだしたことなくて・・・。だから初めては、好きな人としたいんです・・・。」
蒼「そ、そうなんだ。・・・って、は?」
賀喜「だからその・・・私の好きな蒼先輩に、・・・キスして欲しいんです・・・。」

賀喜の言葉に驚きを隠せない蒼。

賀喜「な、なんて。突然言われても困りますよね!ごめんなさい!」
蒼「いや、気持ちは嬉しいよ。でもその・・・本当に俺でいいの?」
賀喜「はい・・・蒼先輩がいいです。」
蒼「既に他の人とキスしてたとしても?」
賀喜「それでも、私は蒼先輩が好きです・・・。だから・・・。」
蒼「・・・分かった。」

そう言って蒼は賀喜に近づき、賀喜の肩に手を置く。肩に置いた手から賀喜の緊張が伝わってくる。
賀喜は緊張しながらもじっと蒼を見つめる。

蒼「じゃあ、いくよ?」
賀喜「はい・・・。」
蒼「本当に?」
賀喜「お願いします・・・蒼先輩。」
蒼「じゃあ、目閉じて、遥香。」

目を閉じる賀喜。その刹那、蒼はそっと賀喜の唇に自分の唇を重ねた。

ほんの数秒の出来事だったが、賀喜にはそれがとても長く感じられた。
唇が離れ、見つめ合う2人。

賀喜「あ、ありがとう、ございます。」
蒼「いいえ。って、顔、真っ赤だよ?」
賀喜「しょ、しょうがないじゃないですか。初めてなんですから・・・。」
蒼「初めての感想は?」
賀喜「えっと・・・よく分からなかったので、もう一度してもらえますか?」
蒼「うーん・・・じゃあ、今度は遥香からおいでよ。」
賀喜「え、そんな・・・。」
蒼「あれ、しないの?なんだ、残念。」

そう言ってわざと離れようとする蒼。
賀喜は覚悟を決め蒼の肩に手を当てキスをする。

数秒後、唇が離れる。
蒼「どう?」
賀喜「ドキドキします・・・。」
蒼「キスの感想じゃないじゃん。でも、俺もドキドキした。ほら、分かる?」

蒼は賀喜の手を持ち自分の左胸に当てる。
賀喜の手に蒼の鼓動が伝わる。

賀喜「ほんとだ・・・先輩も緊張してたんですね。」
蒼「そりゃするよ。なに、しないと思ってたの?」
賀喜「だって、キスしたことあるって言ってたから・・・。」
蒼「キスするときなんていつだって緊張するよ?それに賀喜さんみたいに可愛いと余計に、ね?」
賀喜「遥香って呼んでくれないんですか?」
蒼「呼んで欲しい?」
賀喜「はい。」
蒼「しょうがないなあ・・・遥香。」
賀喜「もう1回。」
蒼「遥香。」
賀喜「もう1回。」
蒼「遥香。」
賀喜「もう1回。」
蒼「もうだーめ。ほら、勉強するよ。」
賀喜「え〜。ちぇ、蒼先輩のケチ。」

拗ねる賀喜。そんな賀喜の頬に蒼はキスをする。

賀喜「っ!!」
蒼「ほら、拗ねてないで、勉強するよ。・・・あ、じゃあこうしよっか。」
賀喜「なんですか?」
蒼「テストで5位以内に入ったら賀喜さんのして欲しいこと1つ何でもしてあげる。」
賀喜「なんでも、ですか?」
蒼「そ、なんでも。まぁ、できる範囲でだけど。」
賀喜「・・・分かりました。絶対5位以内入ってみせます!」
蒼「頑張ってね、応援してる。」
賀喜「あっでも、遥香って呼ばなくてもいいので、かっきーって呼んで欲しいです。だめですか?」
蒼「まぁ、それなら全然。じゃ、勉強しよっか、かっきー。」
賀喜「はい!」

その後2人は気持ちを切り替え2時間ほど勉強した後、日が暮れてきたので帰ることにした。
賀喜の家まで送り届ける蒼。

賀喜「じゃあ、私の家ここなので。今日は何から何までありがとうございました。楽しかったです!」
蒼「俺も。お弁当美味しかった。ありがとうね。」
賀喜「いえ!では、また学校で、蒼先輩!」
蒼「じゃあまたね、かっきー。」

蒼は賀喜が家に入るのを見届けた後、ゆっくりと自転車を漕ぎ家へと帰るのであった。


■筆者メッセージ

Haru ( 2021/10/20(水) 08:13 )