第4章
第75話

来たる週末。
蒼は賀喜に勉強を教えるため図書館に向かった。

図書館に到着し、賀喜を探す。
蒼「どこだろ・・・。ん?」

図書館の中から手を振る賀喜を発見する。
ドアを開け中に入る。

蒼「ごめん、お待たせ。」
賀喜「いえ、私も今来たとこです!すみません、土曜日なのにわざわざ呼んでしまって・・・先輩の勉強もあるのに。」
蒼「大丈夫、1日くらいなんとかなるから。じゃあ、行こっか。」
賀喜「行くってどこにですか?」
蒼「あー、階段上がったとこにちょっとした個室みたいな部屋があるんだ。そっち普段使われてないから他の人居ないし、教えるならそっちの方がいいかなって。ほら、コソコソ話しながら勉強するのも変でしょ?」
賀喜「確かに・・・じゃあ、そっち行きましょう!」

係の人に声をかけ了承を得てから、賀喜を案内し部屋に入る。
小規模の会議なら使えるほどの広さで、ホワイトボードなども置いてあった。

賀喜「こんなとこあったんですね・・・知らなかった。」
蒼「俺も去年初めて知ってさ。いつか使いたいなって思ってたんだよね。」
賀喜「てことは先輩も初めてなんですね。」
蒼「そういうことになるかな。」
賀喜「なんか嬉しいですね。じゃあ、早速始めてもいいですか?」
蒼「ん、了解。」
賀喜「えっと、まずここなんですけど・・・。」

賀喜がノートを開き数学の問題を見せる。

蒼「あぁ、これはね、・・・。」

図を書いて丁寧に説明する蒼。賀喜も頷きながら真剣に聞いている。

蒼「つまりここがこうなるから・・・」
賀喜「あ、こうなるんですね!」
蒼「そういうこと。」
賀喜「なるほど〜。橘先輩、先生よりわかりやすいです!」
蒼「それはさすがにないよ。」
賀喜「だって、先生何言ってるか分かんないんです!あの、数学のおじいちゃん先生!」
蒼「あ〜、あの人か〜。確かに、あの人は感覚で話すからなあ。」
賀喜「そうなんです!前回のテストも頑張ったんですけど難しくて・・・先輩数学得意だって聞いたので教えてもらおって思って!」
蒼「あれ、俺そんな話したっけ?」
賀喜「いえ、飛鳥さんが言ってました!蒼が数学得意だよって!」
蒼「飛鳥も数学苦手だからなあ。いつも俺が教えさせられてる。」
賀喜「それも言ってました!日曜日は私が教えてもらうからって。」
蒼「俺の知らないところで勝手に・・・。」
賀喜「ほんと、先輩に言ってみて良かったです!」
蒼「それなら良かったよ。じゃあ、どんどん進めていこっか。」
賀喜「はい!」

その後も着々と分からない問題を教えていく蒼。気がつけば12時を回っていた。

蒼「あ、もう12時すぎてる。ごめん気づかなくて。」
賀喜「いえ、私も集中してたので気づかなかったです!」
蒼「確かに、凄い集中力だったよ。真面目なんだね、賀喜さんは。」
賀喜「そんなことないです!いつもはみんなとふざけてばっかりです!」
蒼「そういうことにしとくよ。それより、お昼どうする?」
賀喜「あ、実はお弁当持ってきてて・・・。」
蒼「あ、そうなんだ。じゃあ俺持ってきてないから、ちょっと買ってきてもいい?10分くらいで帰ってくるから。」
賀喜「あ・・・。」
蒼「ん、どうかした?」
賀喜「えっと、実は橘先輩の分も作ってきたんです。」
蒼「え、まじ?」
賀喜「はい・・・。なのでもし良かったら食べてもらえるとうれ」
蒼「食べる!」

賀喜の手を握り、食い気味に答える蒼。

賀喜「え、あ・・・」
蒼「あ、あぁごめん。なんか嬉しくて。蓮加や母さんが作った弁当以外で女の子から作ってもらうのとか初めてでさ。」
賀喜「そうなんですか?なんか嬉しいです。どこで食べますか?」
蒼「天気もいいし外で食べよっか。ちょっと行ったところにベンチあるから、そこで食べない?」
賀喜「いいですねそれ、そうしましょう!」

外に出た蒼は賀喜と共に木陰のベンチに座り、賀喜の作ってきたお弁当を開ける。

蒼「凄い美味しそう。これ全部賀喜さんが作ったの?」
賀喜「はい。あ、でも、お母さんに教えてもらいながらですけど・・・。」
蒼「それでも凄いよ。食べてもいいかな?」
賀喜「あ、どうぞ!お口に合えばいいんですけど・・・。」
蒼「いただきまーす。・・・・・美味しい、すごい美味しいよ賀喜さん。」
賀喜「よかった・・・。私も食べよーっと、いただきます!」

2人で話しながらお弁当を食べる。
賀喜の作った弁当には卵焼き、唐揚げ、ほうれん草の白和え、タコさんウインナーが入っていた。
味わいながら食べる蒼。賀喜はその横顔を見つめていた。

賀喜「ふふっ。」
蒼「ん、どうしたの?」
賀喜「ごめんなさい。なんか、橘先輩って美味しそうに食べるなって思って。ちょっと可愛く見えちゃいました。」
蒼「本当に美味しいからさ。ありがとう賀喜さん。」
賀喜「喜んでもらえて良かったです!」

数分後、2人ともお弁当を食べ終えた。

蒼「ごちそうさまでした。本当、美味しかった。ありがとう!」
賀喜「こちらこそ、食べてくださってありがとうございました!」
蒼「じゃあ、戻ろっか。」
賀喜「そうですね。よーし、昼からも頑張ろーっと!」

そう言って2人で戻ろうとしたその時。
「あれ、かっきー?」



Haru ( 2021/10/19(火) 08:23 )