第4章
第72話

蒼「寝過ごすとこだった・・・。」

最寄駅に到着する。
ほんの数分前に蒼が起きなければ確実に寝過ごしていた。

賀喜「危なかったですね・・・。」
田村「先輩が気づかなかったらそのままみんなで寝過ごすところでした。ありがとうございます。」
蒼「疲れてたんだよみんな。じゃあ、無事降りれたことだし、早く家に帰ろっか。みんなはどうやって帰るの?」
田村「私とせーらはママの車で来たので帰りもそのつもりです!」
賀喜「私はお父さんが迎えに来ます。」
さくら「私は歩いて帰ります。」
掛橋「沙耶香もです。」
蒼「なるほど、じゃあさくらちゃんと掛橋は俺が送ってくよ。」
さくら「え、いいですよそんな!先輩の家反対方向じゃないですか。」
蒼「夜なのに女の子だけで歩いて帰らせるわけにはいかないでしょ。それに朝のこともあるし。」
さくら「じゃ、じゃあ・・・えっと、お願いします。」
蒼「ん。掛橋もそれでいいよね。」
掛橋「はい!」

数分後、田村、早川と賀喜の迎えがそれぞれ来たので見送る。

田村「先輩、今日は楽しかったです!みんなもまたね!」
早川「先輩、ありがとうございました!またせーらと遊んでな!」
賀喜「ほんと楽しかったです。ありがとうございました!じゃあ、また学校で!」

それぞれの車が去っていくのを確認し、3人は駅を出る。

さくら「ほんと、今日は楽しかったですね。私、普段あまり遊園地とか行かないので、凄く新鮮で。また行きたいなぁ。」
蒼「まだ若いんだからいくらでも行けるよ。」
さくら「先輩も若いじゃないですか。」
蒼「俺はほら、受験もあるから。」
さくら「あー、そっか。じゃあ、もう私たちと遊んでくれないんですか?」
蒼「勉強の息抜き程度なら大丈夫だけど、そんな頻繁には会えないかな。」
さくら「そうですか・・・。だって、寂しいね沙耶香。」
掛橋「なんだかんだ言って先輩は遊んでくれますよね!優しいから!」
蒼「変なプレッシャーかけるのやめなさい。」
掛橋「えへへっ。」

そうこう話しているうちにさくらの家に到着する。

さくら「じゃあ私の家ここなので。先輩、今日は本当にありがとうございました。最高に楽しかったです。また遊んでくださいね。」
蒼「ん、またね。」
さくら「沙耶香もまたね!」
掛橋「またねー!」

さくらが家に入るのを見届け再び2人は歩きだす。

掛橋「そう言えば、先輩の家って飛鳥さん家の隣なんですよね?」
蒼「そうだけど、何で知ってんの?」
掛橋「さくちゃんが飛鳥さんから聞いたって教えてくれました!飛鳥さんが羨ましいです!」
蒼「まぁ、幼馴染だからね。でもそんな大層なもんじゃないよ。」
掛橋「でも、幼馴染って凄く憧れます。私が蒼先輩の幼馴染だったら、毎日家に遊びに行ってます!」
蒼「毎日はやめてくれ。」
掛橋「えー、いいじゃないですか。」
蒼「さすがの飛鳥も毎日は会ってないからね?学校以外は会わない日も全然あるし。」
掛橋「幼馴染で家が隣で、おまけにクラスも一緒で。沙耶香が飛鳥さんと同じ状況だったら、今頃どうなってたのかな・・・もしかして蒼先輩と付き合ってたりして!」
蒼「ないな。」
沙耶香「何でですか!」
蒼「だって、中学で委員会一緒になったから今の関係なんだから。幼馴染とかだったら、今みたいに仲良くないかもよ?」
沙耶香「そうですかね?沙耶香は幼馴染でも他の学校だったとしても、先輩のこと好きになると思います。」
蒼「好きって、またそんなこと」

そこまで言った瞬間、掛橋が蒼に抱きつく。

蒼「な、ちょっと掛橋、ここ外だから。誰かに見られたらどーすんの。」
掛橋「外じゃなければ良いですか?」
蒼「そういうわけじゃないけどさ。」
掛橋「・・・本気です。沙耶香はずっと、先輩のことが好きです。今までも、これからも。」
蒼「掛橋・・・。」
掛橋「先輩は、沙耶香のことどう思ってますか?」
蒼「どうって・・・そりゃ、仲のいいかわいい後輩、とか?」
掛橋「それは、後輩としてかわいいって意味ですか?」
蒼「・・・まぁ、そうだな。」
掛橋「・・・。」
蒼「掛橋?」

掛橋は一度蒼から離れ、そして、背伸びをして蒼にキスをする。

唇を離す掛橋。2人の視線が重なる。

掛橋「・・・これでもまだ、沙耶香を女として見てもらえませんか?」
蒼「・・・。」
掛橋「な、なーんて。ごめんなさい、調子に乗りすぎましたね!さ、帰りましょう!」

歩き出そうとする掛橋。
蒼は手を伸ばし掛橋の腕を掴む。

掛橋「な、なんですか?離してくださ・・・きゃっ!?」

蒼は掛橋を引き寄せ、抱きしめる。
突然のことに頭が追いつかない掛橋。

掛橋「せ、先輩?どうしたんですか、らしくないですよ・・・怒ってるのなら謝りますから。」
蒼「怒ってないよ。ただ、俺がなんとなくこうしたかった。その・・・ちゃんと向き合えなくてごめん。」
掛橋「じゃあ私のこと、女として見てくれますか?」
蒼「それは・・・努力する。」
掛橋「そこはもう既に女として見てるくらい言ってください。」
蒼「じゃあそう言わせてみなよ、沙耶香。」
掛橋「っ!!先輩、今のもう一回!」
蒼「もう言わない。」
掛橋「なんで!呼んでください、沙耶香って!」
蒼「やだよ。」
掛橋「むぅ〜、なんでですか・・・。」

拗ねる掛橋。
そんな掛橋に蒼はそっとキスをする。

掛橋「先輩・・・。」
蒼「・・・何でだろ、俺もよくわかんない。ただ、沙耶香のことちょっとだけかわいいって思った。」
掛橋「・・・先輩のバカ。もう、絶対に沙耶香のこともっとかわいいって思わせるけん、覚悟しといてくださいね!」
蒼「なんか怖いなあ。」
掛橋「手加減はしませんから!」

そう言って笑顔で蒼の手を引く掛橋。

その後蒼は無事掛橋を送り届け、自分も家へと帰るのであった。


Haru ( 2021/10/17(日) 20:43 )