第3章
第61話

運命の後半戦。
蓮たちのボールから開始する。

翔や蓮の指示もあり、全員でなんとか相手チームの攻撃を守っている。

凪「・・・・・・。」
蓮「凪、こっち!」
凪「はい、あげるー。」

ディフェンスを素早く交わしパスを繋げる凪。

やまと「(あいつの動き・・・なんか見覚えあるような・・・。)」
優太「やまと、あいつ凪だ。乃木中で6番だったやつ!」
やまと「凪・・・6番・・・そうか!どおりで身のこなしが経験者だと思ったんだ。でも中学で辞めたんだよな?」
優太「あぁ、確かあれは・・・」

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白石「あれ今蓮君にパス出したの凪君だよね?サッカーできるの?」
生田「確かに・・・いつもダルそうな感じでサボってるのに。」
松村「ゲームしてんのは想像つくんやけどなぁ。」
飛鳥「・・・出来るなんてもんじゃないよ。」
「「え?」」
白石たちが飛鳥を見る。
白石「出来るなんてもんじゃないって、どういうこと飛鳥?」
飛鳥「あの人は・・・凪君は、中学時代、蒼とずっと乃木中サッカー部を引っ張ってたストライカーだよ。」


「「ええ!?」」
時を同じくして、蓮加の話を聞いた周りが驚く。
梅澤「先輩って中学サッカー部だったの!?」
蓮加「うん、中学2年の冬までね。」
久保「知らなかった・・・。」
与田「あの時の蒼君もかっこよかったなぁ。」
山下「そっか、与田は中学一緒だもんね。」
与田「そう!後半から入った凪先輩おるやん?あの人も上手かったんだよね〜!」
梅澤「でも辞めたんだよね?どうして?」
蓮加「怪我したんだ・・・その時マネージャーしてた後輩の女の子庇って、右足が鉄筋の下敷きになってさ。全治5ヶ月の大怪我だったんだ。」
久保「そんな・・・。」
蓮加「時期も時期だったから、リハビリを頑張ったとしても最後の大会には間に合わないって言われて、仕方なく辞めたの。」
山下「じゃあ、あの凪先輩って人もその時に?」
蓮加「うん。お兄ちゃんがもうサッカーできないのを知って一緒に辞めるって。あいつがいないサッカーは何も楽しくないって。」
梅澤「もう怪我は完治してるんだよね?」
蓮加「うん、リハビリ必死に頑張って、中学3年の夏前には普通の生活に問題ないくらいに回復してた。高校からは運動しても問題なかったよ。」
久保「そっか、大変だったんだね、お兄さん・・・。」
大園「でも、桃子も中学の時のお兄さん見てみたかったなあ〜。」
山下「今もすごい上手いけど、昔の方が上手かったの?」
蓮加「うん、昔はもっと上手かったよ・・・ってあれ?そう言えば・・・。」
与田「ん?蓮加どうしたの?」
蓮加「いや、そう言えばお兄ちゃん、元々左利きなのに、ずっと右でしか蹴ってないなって思って。なんでなんだろうなって。」
与田「確かに・・・中学の時はパスもシュートも左足で打ってた気がする。なんでだろう?」
梅澤「リハビリずっとしてたから右足の方が上手くなったとか?」
蓮加「うーん。」
久保「左足痛めてるとか?」
蓮加「いや、聞いたことない。」
大園「お兄さんたまに抜けてるから、右足使い慣れすぎて左利きなの忘れてるとか〜、はさすがにないか〜。」
「「・・・・・・めっちゃありそう。」」

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後半が始まって5分が経過した。
時折攻められるシーンが見られるものの、みんなが守備にまわって居るからか前半より上手く凌いでいる。

蒼「(だいぶ痛みも治まって来た。だからみんな、あと少し耐えてくれ。)」
蒼が冷やしながら右足のストレッチをしていると、飛鳥がゆっくりとやってくる。


飛鳥「蒼。」
蒼「飛鳥。どうしたのこんなとこまで。」
飛鳥「いや、ちょっと心配で。大丈夫かなって。」
蒼「だいぶ痛みも治まったから、あと5分ストレッチしたら出るよ。ありがとう。」
飛鳥「私は何も。なぁちゃんのおかげだよ。」
蒼「ほんと助かったよ。後でお礼伝えないと。」
飛鳥「うん、そうだね・・・。あのさ。」
蒼「ん?」
飛鳥「試合見てて思ったんだけど・・・左足、使わないの?」
蒼「え?」
飛鳥「え?じゃなくて。蒼の利き足、左じゃん。中学でもずっと左で蹴ってたじゃん。」
蒼「・・・・・・あ。」
飛鳥「・・・もしかして忘れてたの?利き足を?嘘でしょ?」
蒼「リハビリでずっと右足ばっか鍛えてたから・・・。」
飛鳥「信じられない!どんだけ鈍感なのよ!」
蒼「そっか・・・そうだ、俺左利きだったんだ・・・。ありがとう飛鳥。」

蒼は飛鳥の頭を撫でる。

飛鳥「お、お礼言われるようなことしてない!ほら、治ったならさっさと出てゴール決めてよね!」
蒼「痛って!おい、怪我人を蹴るなよ!」
飛鳥「うるさい!・・・応援、してるから。絶対勝ってよね。」
蒼「・・・あぁ、任せろ。」

蒼がベンチから立ち上がり、審判に選手交代の合図をする。

「ピピーッ!A組、選手交代!」

蓮「・・・ったく、おせえよ。」
蒼「悪いみんな、遅くなった。」
翔「さて・・・じゃあここから挽回といきますか。」
蒼「そうだな。凪、俺のことしっかり見てろよ。」
凪「うん・・・もちろん。」
蓮「よし、じゃあいくか!」
「「おおっ!!」」


試合決着まで、あと10分。


Haru ( 2021/10/12(火) 09:11 )