第3章
第57話

蒼は食堂横の自販機で水を買って保健室に戻る。

蒼「はい、お水。あと、食堂でゼリー買ってきたから、食べれそうだったら食べて。」
七瀬「ありがとう。後で食べる。」
蒼「うん。」
七瀬「あ、そんなことより蒼試合は?負けたん?」
蒼「いや、無事決勝トーナメント進んだよ。予選は蓮たちが残り1試合頑張ってくれてる。」
七瀬「そっか。ごめんな、ななのせいで・・・。」
蒼「謝るの禁止。それに約束したでしょ、力になるって。」
七瀬「うん・・・。」
蒼「ほら、そんな暗い顔しないで、あとはもうゆっくり寝て治しなよ。」
七瀬「うん、そうする。」

七瀬はゆっくりと横になる。

七瀬「あ、あのさ蒼。」
蒼「ん、どうしたー?」
七瀬「なながぐっすり寝られるように、手握ってほしい・・・。」
蒼「いや、それは・・・。」
七瀬「ななの風邪が悪化してもええん?」
蒼「はぁ・・・わかったよ。その代わり、寝るまでだからな。」
七瀬「うん、ありがとう。」

蒼が七瀬の手を握ろうとしたその時。
廊下からバタバタと走ってくる音が聞こえる。
慌てて姿勢を直す2人。

ーガラガラッー

白石「なぁちゃん、だいじょうぶ・・・って何してんの?2人とも。」
蒼「いや、別に何も?」
白石「ふーん?あ、それよりなぁちゃんもう大丈夫なの!?」
七瀬「あ、う、うん。熱は下がってきたみたい。なんかごめんな。」
白石「何でなぁちゃんが謝るの!私たちこそ気づけなくてごめん!」
七瀬「大丈夫、ななも途中まで気づけやんかったから。」
松村「そや、聞いて、さっきの試合飛鳥すごい活躍してん!一人で10点くらい入れたんやで!」
蒼「まじ?凄いじゃん飛鳥。」
飛鳥「へへん、私だってやればできるんだ!」
秋元「まぁ、その分はずしてたけどね。」
飛鳥「おい真夏、うるさいぞ!」
七瀬「試合は勝ったん?」
白石「なんとかね!でも、決勝トーナメントで当たるチームがバスケ部4人いるから、次は厳しいかも。頑張るけどね!」
七瀬「ななも行けたら応援行くから、頑張ってな。」
白石「もちろん、なぁちゃんの分も頑張るよ!」

そのとき、扉が開き深川先生が帰ってくる。

深川「あれ、みんなそろってお見舞い?仲良いわねほんと。」
生田「あ、深川先生だ〜、久しぶり〜!」
深川「こらこら、私も一応先生だからね?まあ良いけど、他の先生にはちゃんと敬語使うのよ?」
生田「はーい、気をつけまーす!」
七瀬「あ、蒼、そろそろ戻ってかんまんよ?先生戻ってきてくれたし、ご飯食べてないやろ?」
蒼「分かった。また何かあったらいつでもくるから。」
七瀬「ありがとう。あ、そや。クラスマッチ、絶対優勝してな。」
蒼「あぁ、任せて。じゃあみんなも行こう。」
白石「そうだね。じゃあなぁちゃん、ゆっくり寝てなね!先生、なぁちゃんのことお願いします!」
深川「はーい、頑張ってきなさ〜い。」

こうして蒼たちは保健室を後にした。

教室に戻ると蓮たちが既に弁当を食べていた。
蓮「あ、蒼。七瀬さん大丈夫なのか?」
蒼「あぁ、熱ももうだいぶ下がってきたみたいだし、安静にしてれば問題ないって。」
蓮「そっか、良かったな。」
蒼「あぁ、試合どうだった?」
翔「引き分け。後5分粘れてたら勝てたんだけどな。PK取られちゃってさ。」
蒼「そっか。でもなんとか無事1位通過できたみたいで良かったよ。」
蓮「いよいよ決勝トーナメントかぁ。なんか楽しみだな。」
蒼「あぁ。」

昼食を終えた蒼たちはグラウンドへ向かう。

グラウンドへ行くと既に応援に来たであろう山下たちがいた。

山下「あ、いた〜。ちょっと蒼先輩、試合見に来てくれるって言ったのに、何で来てくれないんですか。」
蒼「ごめん、ちょっと急用で外せなくて。」
山下「もう、楽しみにしてたのに、酷いです。先輩とはもう話しません。」
蒼「ほんと、悪いと思ってる。」
山下「・・・ふふっ、冗談です。先輩が西野さん助けてるの見てましたから。カッコ良かったですよ?」
蒼「先輩をからかうなよ・・・。」
山下「ちょっとした仕返しです。」
蒼「で、試合は?」
山下「残念ながら負けちゃいました。なので先輩の応援に来ました。」
蒼「なるほど。じゃあ約束はお預けだな。」
山下「え〜、頑張ったのに・・・。」
蒼「・・・仕方ない。1個だけね。」
山下「ほんとですか!?やったぁ〜!」
蒼「その代わり、もし俺が優勝したら俺にもご褒美ね?」
山下「ご褒美?先輩にですか?」
蒼「そ。また内容は決めておくよ。」
山下「分かりました。何でも良いですよ?」
蒼「言ったからな。じゃ、行ってくるよ。」
山下「はーい、がんばってくださーい!」

山下といた大園たちにも一通り声をかけてからコートに向かった。

準決勝は2試合同時に行われるらしい。
白石たちもすぐ試合があって応援に来れないらしく、背中に1発ずつ喝を入れられた。


そのおかげもあってか、前半を1-0で折り返した蒼たちは後半に追加点1点を入れ、2-0で勝利した。

蓮「残すはあと決勝か・・・。」
蒼「たぶん日村先生のチームだろうな。スコアは・・・」

審判「ただ今の試合は、5-0で、3年B組の勝ちです!」

蓮「なっ!?」
翔「俺たちが苦戦した相手に5-0か。B組そんなに強いの?」
蒼「サッカー部4人だからなぁ。だいぶ厳しい戦いになりそうだな。」
蓮「まぁ、相手が誰だろうと勝つけどな。」
翔「もちろん。ここまできて2位で良いわけないもんな。」
蒼「あぁ、絶対勝とう。」



決勝戦まで、後20分。


Haru ( 2021/10/10(日) 09:58 )