第2章
第33話

蓮「それでは、設楽軍の体育祭優勝を祝して〜!」

「「かーんぱーい!!!」」

体育祭後。
蒼たちは商店街のカラオケ店で打ち上げをしていた。
今日は蓮加もクラスで打ち上げをするらしく、みなみも堀達とご飯に行くと言っていたので心配はないが、一応連絡を入れておくことにした。

蒼「これでよし・・・と。」
飛鳥「誰と連絡してたの?」
蒼「蓮加とみなみに一応ね。2人とも今日外で食べて帰るらしいけど。」
飛鳥「そっか。」
蒼「うん。」
飛鳥「・・・そういえばさ、さっきのあれ、かっこよかった。」
蒼「さっき・・・?ああ、掛橋の。」
飛鳥「うん、なんかえんぴーが言ってたように、本当にヒーローみたいだった。」
蒼「一応後輩だからな。」
飛鳥「私が掛橋ちゃんと同じ立場になってたとしても、助けてくれる?」
蒼「そりゃな。まあでも飛鳥の場合、白石や松村もいるし俺の助け要らなさそうだけど。」
飛鳥「まぁね。・・・あとさ、リレーの時慰めてくれてありがとう。」
蒼「なに、今日やけに素直じゃん。熱でもあるの?」
飛鳥「別に、そんなんじゃない。ただ言いたかっただけ。」
蒼「そっか。まぁ仮に飛鳥に何かあったら、俺はいつでもすぐ飛んでいくと思うよ。」
飛鳥「それってどういう・・・」

蓮「あー、何そこ幼馴染でイチャイチャしてるんですかー!はい、マイク持って!歌って!」
蒼「はぁ・・・ほら飛鳥、歌おう。」

飛鳥と2人でデュエットをした。
久々のカラオケだが、やっぱり歌うのは気持ちがいい。

白石「じゃあ次翔君!」
翔「俺か〜、何にしようかな。」
松村「何歌うんやろ、楽しみやな〜!」
翔「じゃあこれにしよっと。」

画面に曲名が表示される。

『君が代』

「「いや国歌て!!」」

全員の綺麗なツッコミが炸裂する。
ノリノリで歌い切った翔。本人が満足なら、まあいいか。

生田「じゃあ次私歌う〜!まいやんデュエットしよ〜!」
白石「いいよ〜!いくちゃんと歌うの久しぶりでなんか緊張する〜!」
蒼「俺ちょっと飲み物とってくる。」
生田「えー、せっかく私たち歌うのに〜。」
蒼「すぐ戻ってくるから。歌ってて。」
生田「仕方ない!じゃあ歌ってるよ!」
蒼「はーい。」
飛鳥「あ、蒼、私のもついでに取ってきて。烏龍茶がいい。」
蒼「はいはい。」

2人分のグラスを持って部屋を出る。
飲み物を注いでいると部屋から七瀬が出てくる。

蒼「七瀬も飲み物注ぎに来たの?」
七瀬「まあそれもやけど、ちょっと休憩したくて。」
蒼「みんなに歌ってってずっと言われてたもんな。じゃあ、俺もちょっと休憩〜。」

七瀬と2人で階段の踊り場に座る。

七瀬「体育祭、優勝できて良かった。蒼のおかげ。」
蒼「俺だけじゃない、みんなが頑張ったんだから。」
七瀬「まあせやけど、それでも、蒼が最後抜いてくれんかったら、負けてたから。」
蒼「内心ちょっと諦めかけてた。でも約束のこと思い出してさ。絶対勝たなきゃって。」
七瀬「ありがとう、蒼。」
蒼「いいえ。」
七瀬「あ、そや、写真撮ろ?」
蒼「良いけど、ここで?戻ってからみんなで撮ればいいんじゃ」
七瀬「もう、本当に蒼は鈍感やな。ななは今撮りたいの。蒼と2人で。」
蒼「鈍感って・・・。」
七瀬「はい、じゃあこっち向いて、はい、チーズ!」

七瀬と何枚か写真を撮る。
その都度写真を確認し微笑む七瀬。

七瀬「ふふっ、よし、ありがとう!本当は体育祭で2人で撮りたかってんけど、機会つくれやんかったから。」
蒼「結構バタバタしてたしな。まあでもみんなで撮ったり出来たし、現像楽しみだな。」
七瀬「うん。」

何もない時間が流れる。

七瀬「あのさ蒼。」
蒼「なに?」

蒼が七瀬の方を振り向くと、不意に唇が重なった。
数秒間の静寂。

蒼「七瀬・・・。」
七瀬「・・・なな、蒼が好き。」
蒼「ま、まじで?」
七瀬「まじで。」
蒼「ふ、ふーん、そっか、そっか・・・。ありがとう、嬉しい。」
七瀬「今照れてたやろ〜?」
蒼「当たり前でしょ、いきなりキスされて告白されたら誰だって照れるよ。」
七瀬「それだけ?」
蒼「あとはまぁ・・・七瀬可愛いから・・・とか。」
七瀬「もう、そこは俺も好きって言うとこやろ?」
蒼「え、あ、ごめん。」
七瀬「ふふっ、うそうそ、冗談やで。蒼が私のことまだ好きじゃないの知ってるし。」
蒼「そ、そっか。」
七瀬「でも、覚悟しといて?卒業するまでにななのこと絶対好きにさせるから。」
蒼「ああ、分かった。」
七瀬「ふふっ。じゃあなな、そろそろ戻ろっと!蒼も戻る?」
蒼「あー、俺はもう少ししてから戻るよ。一緒に帰ったら怪しまれるだろうし。」
七瀬「ななは怪しまれてもええんなけどなあ。まあ今日は我慢しとくわ。あ、飲み物持って行っとこか?」
蒼「あ、じゃあ頼める?」
七瀬「了解〜、じゃあ、待ってるから。」

そう言って七瀬は再度蒼にキスをし、悪戯っぽく舌を見せた後戻っていった。


蒼「はぁ・・・反則だろあんなの・・・。」

蒼の心臓が今までにないほどの速度で脈打っていたことを七瀬は知らない。


Haru ( 2021/09/26(日) 15:00 )